行政データの信頼を根底から喪失させ、国の減反政策への不信感も招きかねない事態が起きている。
国家政策をも誤らせかねない重大な問題である。虚偽データの駆逐と同時に捏造(ねつぞう)を許さない調査体制の確立を急ぎたい。
減反政策の根拠にもなるコメの在庫量調査で農林水産省の調査担当職員らがデータを捏造、虚偽の報告をしていたことが今年5月に判明した。
不祥事を受け、農水省は調査を担当している全国約1800人の職員に緊急調査を実施したが、同様の不正行為が多数見つかった。
同省は19日、56人の処分を発表したが、処分対象者の多さに驚かされる。事態は予想以上に深刻だ。
行政のデータが「うそ」となれば、そのデータを基にした行政・政治判断、政策も危うい。
コメの在庫量調査は1970年度から始まったコメの生産調整・減反政策の基礎データでもある。
調査は担当職員らが実際に農家を回り、データを作成してきた。
ところが担当職員が現場に行かず、調査もないままに虚偽データを捏造、報告していたことが今年5月、九州農政局と福井農政事務所で発覚した。
担当職員らは現場調査の未実施を隠すため、架空の出張報告も作成し、出張もしていないのに出張手当を受け取り、訪問先で調査に協力した農家に支払うはずの謝礼も着服していた疑いも出ている。
不正を隠すため、新たな不正を重ねていく「不正スパイラル(渦巻き)」を起こしている。
その後の全国調査で、不正行為が全国規模で「常態化」し、「一種の慣行、なれ合い」(石破茂農相)となっている実態が明らかになった。
在庫量調査の捏造問題は、国の減反制度の運用に対する信頼も揺るがす事態にも発展しかねない。
農水省絡みでは、昨年3月にも植物防疫官らが海外出張中に利害関係者から接待を受けるなどして42人が処分されている。
農水省は汚染米問題や汚染輸入食品問題など、国民の食の安心・安全を担う重要な役所である。
その重要な役所が、ずさんな調査とデータの捏造を繰り返す。国民は何を信じればいいのか。
リンゴの樽(たる)に腐ったリンゴが混ざると他も腐らせる。「腐敗のスパイラル」に歯止めをかけるためにも、不正の一掃を急ぎたい。
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