安全であるはずの学校で起きた大惨事は、小学生11人と一般住民6人の尊い命を奪い、210人が負傷した。今も惨事を語らない人たちは少なくない。心的外傷に苦しむ人もいると聞く。筆舌に尽くし難いつらい、悲しい体験だからこそ、口を重く閉ざすのだろう。
1959年6月30日、石川市(現うるま市)の宮森小学校で米軍ジェット機(F100D戦闘機)が墜落した。きょう30日は、事故から50年となる。かけがえのない子や肉親を失った人たちの心痛は計り知れない。二度とあってはならない、繰り返してはならない事故だけに記憶を継承し、平和の実現に努めることが肝要だ。
■より深い心の痛手
米軍嘉手納基地を飛び立った戦闘機は、上空で操縦不能となった。パイロットは機首を人家のない丘陵地帯に向け、脱出した。機体は右旋回し、民家をなぎ倒し、宮森小校舎に直撃、炎上した。戦闘機は、整備不良が見つかったエンジン整備後の試験飛行だった。
安否を気遣う父母たちの前で米軍は現場を封鎖した。45年の沖縄戦終結を経て、石川市は捕虜収容所での生活が始まり復興のさなかだった。米軍施政下という沖縄が置かれた特異な境遇の中で、関係者らの悲劇と、心の痛手はより深いものとなった。
宮森小では、事故を風化させないという取り組みが進む。資料室「宮森630館」設置に取り組んでいる。事故当時、小学校2年生だった同小校長の平良嘉男さんが呼び掛け、50年前の児童のアルバムや作文、絵画、おもちゃなど遺族から遺品300点余が寄せられた。50年目の30日に、仮オープンし、資料公開が始まる。
祈念碑「仲よし地蔵」が同小の中庭にある。亡くなった児童の名が刻まれ、毎年事故が起きた日に慰霊を続けている。祈念碑と併せ、平和学習室の取り組みは、惨事が再び起きないために事故の実相と教訓を継承し、これから何をすべきかを考える機会となろう。
戦闘機墜落事故が起きた1週間前は、沖縄戦の組織的な戦闘が終わったとされ毎年めぐり来る「慰霊の日」だ。事故機が飛び立った米空軍嘉手納基地では、特別な配慮がされるはずのその日、今も激しい航空機騒音で周辺住民が苦しめられている。
2000年から嘉手納基地に隣接する嘉手納町屋良で騒音測定が行われている。測定開始以来、先日の「慰霊の日」の騒音(70デシベル以上)が1日で260回を超え、過去最多となった。
この日は、沖縄戦戦没者の冥福を祈る県民にとって特別な日として、規制措置で「航空機の飛行を最小限に配慮する」としている。そのため、平日に比べ騒音回数は少なく、08年の慰霊の日は49回だった。が、今年は5倍以上となる異常ぶりだ。
■変わらぬ基地被害
騒音増は、航空機のエンジン調整が主な要因だが“良き隣人”のはずの米軍は「慰霊の日」に対する県民の思いをどのように受け止めているのだろうか。住民感情を逆なでするものだ。
小学校4年生だったという。教室を出ようとした瞬間、墜落事故の熱風を受け、両手足と額にやけどを負った當真嗣幸さん(59)は、上空を飛ぶ米軍機に「事故の瞬間に戻るように胸がドキドキし、ビクッとする」と体に刻まれた記憶に今も苦しめられる。
県民は、米軍基地被害に苦しみ、悩まされ続けている。市街地の真ん中にある米海兵隊普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題について米下院は「最低限の飛行安全性を上下両院の軍事委員会に保証しない限り、国防長官は移転を認めてはならない」と注文を付けた。
あくまで米軍にとって、代替施設は安全基準を満たさないということが理由だが、狭い県土の沖縄に安全を満たす新たな米軍施設を建設する場所などあるはずもない。
ミルク給食を待っていた児童たちを突然襲った「火の玉」に沖縄戦の激烈な爆撃を忘れることのできない教諭らは「戦争だ」と叫んだという。
戦争を想起させる戦闘機の激しい騒音は、戦後64年を経た沖縄社会に不安をもたらし続けている。墜落の悲劇が再び、起こらない、起こさせないためにも、宮森小の追悼の半世紀をあらためてかみしめ、子どもたちをはじめ、尊い命を守る平和とは何かを考える日にしたい。
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