被害者全員が納得する解決となるだろうか。水俣病の未認定患者の救済を図る特別措置法案に自民、公明、民主の3党が合意したが、「政治決着」の手法に疑問をぬぐえない。
2004年の最高裁判決は、工場排水の水銀垂れ流しを放置した国や県の責任を認め、水俣病についても国の基準より緩やかに認定する判断を示した。
本来、国は最高裁判決を真摯(しんし)に受け止め、科学的な見地で従来の厳しすぎる認定基準を見直し、積極的な救済策に乗り出すべきではなかったか。
国は最高裁判決後も認定基準を見直していない。このため国の認定審査で棄却された人らが原告となり、新たな提訴が続いている。幅広い被害者救済の行政努力が見られぬまま、特措法案の「解決」が先行するありように違和感を覚える。
3党が合意した特措法案は救済認定の範囲を一定程度広げる一方で、補償費用の捻出(ねんしゅつ)のため原因企業のチッソを分社化する内容だ。
被害者の間には「高齢化した被害者のため今国会で成立を」と期待する声も多い。解決を待ちわびる被害者からすれば当然だろう。
これに対し裁判の原告や弁護団は「誤った認定基準を見直し、被害者の全面救済を図るべきだ」と厳しい見方を示している。
チッソ分社化は補償金支払い後に親会社を清算し、子会社を存続する計画だ。
これに対しても被害者側は「原因企業が見えなくなり、責任が不明確になる」と強い反発の声を上げている。
補償金を支払い、会社を清算した後の新たな被害申請への対応など不明確な点が多い。
国の被害者救済は認定基準があまりに厳しく申請却下が多かったため、1995年にも未認定患者に一時金260万円を支給する「政治決着」を図られた経緯がある。今回の特措法案はこれに次いで未認定者の救済を図るものとされている。
しかし被害者側が求める認定基準の見直しと本格的な再調査がなされなければ、被害者の全体像を把握した上での真の全面救済にはつながらないのではないか。
最高裁判決で責任を指摘された国は原因企業任せでなく、責任ある認定基準の見直しにより被害者の全面的な救済を図るべきだ。
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