2009年版「防衛白書」は、中国、北朝鮮の脅威を前面に、国民に危機をあおる中身となった。
一方で、文民統制の緩みと重大視された田母神俊雄前航空幕僚長更迭問題は詳述を回避するなど防衛省の思惑が色濃く出ている。 これでは、「より多くの国民に防衛政策や過去一年間の防衛省・自衛隊にかかわる主要な事象について理解をいただくため」(浜田靖一防衛相)に刊行しているはずの白書の信頼が揺るぎかねない。
国民全体での幅広い防衛論議のためにも、主要事象の正確でフェアな開示を求めたい。
沖縄関係では在沖米海兵隊のグアム移転経費を「沖縄の負担軽減」のために日米双方が移転経費を分担するに至った経緯説明に大幅にページを割いている。日米安保至上主義のスタンスが垣間見える。
いわゆる「田母神論文」問題で「前航空幕僚長が民間企業主催の懸賞論文に応募し、不適切な見解を述べた」など、わずか半ページの記述とはあまりに対照的だ。
田母神論文は「わが国が侵略国家だったなどというのはまさにぬれぎぬ」と主張し、侵略と植民地支配を認めて謝罪した1995年の「村山(首相)談話」や政府見解を否定するものだった。
事態を重視した防衛省は空幕長を更迭。「文民統制の面からも適切ではない重大な事案」とする報告書までまとめている。
にもかかわらず白書は文民統制の実効性に対する問題には言及していない。その理由を「田母神氏に共感し、更迭に不満を持つ自衛官もいるので、あえて踏み込まなかった」とみる防衛省幹部もいる。
だとするならば文民統制の緩みは一幹部の特異なケースではなく自衛隊内部の構造的な問題であり、看過できない。
文民統制の緩みという「重大な危機」を隠ぺいするような白書では国民の理解と信頼は得られない。
中国の空母保有の動きや海・空軍の近代化の加速、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射、長射程化、再核実験など重大な脅威を強調する白書だが、国民にアジア周辺諸国への疑心暗鬼をあおっているように映る。
日本は軍事より世界の経済発展と交流を先導する役割をより重く担ってきた。その点では軍事に加え経済、食料、環境、人的交流など多角的・多国間安保にも、より紙幅を割き、論及すべきであろう。
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