最高裁の裁判官が「憲法の番人」としてふさわしいかどうか、国民が直接チェックする国民審査が告示された。衆院選の公示と同時とあって、激しい選挙戦に埋没しがちだが、こちらも有権者が意思表示できる大切な制度だ。
審査を受ける裁判官一人一人の経歴に加え、過去の判決でどういう判断を下したのかなど実績を見極めて1票を投じたい。
司法は国会や内閣から独立し、憲法や法律の定めと裁判官の良心に従って裁判を行う。これが裁判官を憲法の番人と呼ぶゆえんである。
その番人の命運を握る重要な審査だというのに、国民に印象が薄いのはなぜか。それは投票の方式や審査に当たっての判断材料の不足など、制度の運用面に一因があるように思えてならない。
国民審査は、任命後初めて衆院選を迎える裁判官が対象だ。初審査から10年を経た衆院選時にも、審査に付される。
有権者は辞めさせたい裁判官の欄に×印を書き、有効投票の過半数となった裁判官は罷免される。何も記入しなければ「信任」とみなされ、×印以外の記入はすべて無効となる。
この投票方式だと、×印が少なくなるであろうことは容易に推測できる。一般的に考えて、判断材料が乏しい場合、印を付けにくいものだ。過去20回、延べ148人が審査されたが、罷免された例がないことからもうかがえる。
「信任」は○印、不信任を×印とすれば分かりやすいが、現行法は違う。罷免の可能性を高めたくないとの思惑すら感じられる。審査制度の形骸(けいがい)化に、不要論が出る理由だ。
いずれにしろ、憲法の番人としてふさわしい裁判官かどうかの判断材料が、国民の側に十分に提供されているとは言い難い。最高裁のホームページでも審査の詳細は分からないし、周知徹底しようという姿勢が見えにくい。
確かに、審査日が近づくと裁判官の氏名などが書かれた「審査公報」が各世帯に配布される。しかし、そこで初めて裁判官の氏名や経歴を知る人もいるだろう。
報道機関も役割が問われよう。今回審査を受ける裁判官9人の詳細な判断材料を示したい。そのためにも最高裁の積極的な情報開示や、法曹界の率先した取り組みが必要になる。
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