「正直は一生の宝」と学校で教わった。正直にしていると信用を得るだけでなく、自分自身も満ち足りる。だから一生守るべき宝である、という意味だ。
現実の社会はどうか。「嘘(うそ)つきは泥棒の始まり」と言われるが、不正直なのは犯罪者に限らない。わが国では、むしろ政府が率先して嘘をついているのだから始末に負えない。
1972年の沖縄返還をめぐり、日米両政府は米軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本が肩代わりする内容の密約を交わした。米国が公開した公文書などで明らかになっているが、日本政府は一貫して否定し続けている。
密約文書の情報公開請求に対し、国側が不存在を理由に開示しなかったため、作家の澤地久枝さん、元毎日新聞記者の西山太吉さんらが処分取り消しなどを求め、3月に提訴していた。
日本政府は、密約の存在を示す米側の公文書について「米側が返還交渉の途中で一方的に作成し、米側のみに存在する可能性が高い」と新たに主張するという。密約自体は依然として否定する方針だ。この期に及んで、往生際が悪いことこの上ない。
対米交渉の当事者だった吉野文六・元外務省アメリカ局長は2006年、密約の存在を初めて認めた。同氏は原告側証人として出廷する意向だという。
核持ち込みの密約についても、村田良平氏ら複数の外務次官経験者が存在を明らかにしたが、政府は否定する姿勢を崩していない。
政府はいつまでしらをきるつもりなのか。その場しのぎの言い逃れに納得するほど国民は愚かではない。
今からでも遅くない。真実を偽り、糊塗(こと)するのをやめ、米国との間でどのような密約があったのか、洗いざらい公表すべきだ。
隠してもいずれ露見する。このまま嘘をつき続けるのは国民の不信感を増幅させる結果しかもたらさない。教育的見地からも無視できない問題だ。「嘘をついてはいけない」と教師が児童生徒に説いても「政府の人は平気で嘘をついている」と反論されたらどう説明するのか。
密約があるにもかかわらず、「米国側が一方的に作成した」と主張するのは、米国だけにその責任を押し付けるようなものだ。外交上の信頼関係を損ね、日本の国際的信用にもかかわりかねない。
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