米軍ヘリコプターの騒音を地元住民たちは、どのように聞いただろうか。騒音を体感した名護市の島袋吉和市長は「近くの住民は大変だ。可能な限り、沖合に出す姿勢を堅持したい」と話し、「宜野座村の東肇村長は「われわれが聞いている普段のものより、ない感じだ。あまり参考にならなかった」と不満をにじませた。
米軍普天間飛行場移設予定地の名護市辺野古沿岸部で、沖縄防衛局は米軍ヘリの試験飛行を行った。地元から「住民に騒音状況を認識してもらうため」という要望を受けて実施したものだったが、果たして普段と同様の飛行だったのか。測定を意識したものではなかったか。疑問符がつく。
幹線道の交差点並み
防衛局は調査結果を9月中にまとめる予定だが、辺野古区内での名護市の測定で80・6デシベルが記録された。電車の中や交通量の多い幹線道路の交差点付近の騒音と同レベルだった。民間地域への騒音被害は明白だ。
今回の調査は、宜野座村松田から名護市嘉陽までの住宅地など沿岸部15カ所で行った。直接、耳には聞こえないが健康被害が指摘される低周波音も測定した。飛行経路は、環境影響評価(アセスメント)準備書に示した図を基本にV字形滑走路への進入を想定し、CH53大型ヘリ2機が飛行した。
試験飛行は、滑走路侵入経路に沿ったものだったが、ヘリは航空機と異なり、滑走路への進入は原則としてどこからもでき、自由自在だといえる。そのため、一定の条件だけでの試験飛行では、多様な結果は得られない。
基地周辺で暮らす人たちは常にヘリや戦闘機の騒音に悩まされている。民間機が使用する空港周辺でも同様の騒音はあろう。騒音は、季節ごとに変わる風向きや、人々が寝静まる夜間から深夜など自然、生活環境の変化でも聞こえる状況が変わる。騒音が日々の生活リズムを妨げる。
さらに県などが求める沖合移動させた滑走路位置での測定も必要だったろう。日米政府が合意した滑走路位置と、沖合移動位置の比較検討をすることで、差異が明確になる。これでは、騒音を警戒する地元住民が求めた試験飛行の要望に対し、形式的な調査だと言われてもやむを得ない。
先の衆院選で大勝した民主党を中心にした3党連立政権が16日の特別国会で誕生する。3党内の事情もあり、選挙運動期間の政権公約(マニフェスト)の濃淡が、選挙後の連立政権合意の中で明らかになった。
しかし、「米軍再編や在日米軍基地の在り方ついても見直しの方向で臨む」とする合意書が交わされた。在沖米軍基地の議論は、新政権の中で活発化することは間違いない。なおざりの試験飛行では、積極的な基地見直し議論に努める決意を示す政権として受け入れることはできないはずだ。
機材に不具合続く
移設予定地の辺野古での試験飛行は1997年と2001年にも実施している。01年3月は岸本建男名護市長(当時)の要望で実施されたもので、想定される飛行コースをCH53ヘリ4機編隊で2時間飛び、住宅地などで騒音を測定した。当時も最大値で辺野古集落中心から1・4キロの地点で83デシベルを記録した。
今回の調査は、試験飛行に使用する大型ヘリの整備不良から、1日繰り延べされた。01年調査時も4機のうち1機が飛行中にエンジン不調で引き返した。老朽化し、墜落危険性が増す大型ヘリの実態があらためて浮き彫りになった。 辺野古に移設しようとする普天間代替施設は、市街地の真ん中にあり、米国高官さえ危険性を懸念した軍施設だ。その除去が移設の最大の目的である。施設を利用するヘリや航空機の不具合は、周辺住民だけでなく、同様の環境下にある県民、国民に不安を与える。
普天間飛行場には、大型ヘリの後継機として垂直離着陸機MV22オスプレイの配備も確実視される。同機は、辺野古への配備も検討されている。普天間飛行場の危険性が除去されても、新たな施設に危険性が指摘される機材が配備されるのでは心配でならない。
騒音被害の恐れは強まった。現在進むアセスについては、防衛局は、過去のデータで十分だとするが、既に80デシベルを超える騒音が観測されている状況を踏まえ、しっかり反映すべきだ。
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