「犯人は別にいます。冤罪(えんざい)で苦しむ人が二度とないように」。再審の初公判で述べた菅家利和さんの言葉が、問題の本質を言い尽くしていた。人権を守るため冤罪をなくすことは同時に、真犯人逮捕のためにも不可欠だ。
菅家さんは園児殺害で無期懲役の判決を受けたが、DNA再鑑定で体液の不一致が判明し6月に釈放され、再審が決まった。
その後、菅家さんに対し栃木県警本部長、宇都宮地検検事正、最高検次長検事が「無実の菅家さんを起訴し申し訳ない」などと全面的に非を認めて謝罪しており、無罪判決は確実とされる。
再審裁判は菅家さんの冤罪を晴らすだけでなく、捜査と裁判の過程を検証することで冤罪の原因を究明し、再発防止を図るものでなければならない。
警察、検察の過酷な追及が菅家さんを虚偽の自白に追い込み、冤罪を生んだことは明らかだ。取り調べ過程から不当な自白の強要や誘導を一掃する必要がある。
弁護側は虚偽自白の経緯を解明するため、取り調べの録音テープを法廷で明らかにするよう求め、裁判所が地検に提示を求めた。
検察側は速やかな無罪判決と審理の終結を求めているが、録音テープの法定内での開示などにも積極的に応じるべきだ。
検証が不十分なままに裁判の終結を急ぐことなく、録音内容を徹底的に吟味し、取り調べの問題点を洗い出すことで適正な取り調べの確立に役立ててもらいたい。
民主党は自白強要による冤罪をなくすため取り調べの録音・録画(可視化)の法整備を検討している。
菅家さんに有罪判決を下した裁判所は、公判の無罪主張に十分に耳を傾けず、捜査側の自白調書を偏重したことを猛省すべきだ。
菅家さんの体液と一致した当初のDNA鑑定が再鑑定では一致せず、証拠が根底から覆った。科学的であるべき鑑定の信用性をどのように判断し証拠採用したのか、不確かな証拠による誤判決を繰り返さないために、裁判所も関心を持って追究してほしい。
菅谷さんは無実の罪で17年間拘束されたが、被害者と遺族にとっても「空白の17年」となった。すでに時効が成立し、真犯人訴追の道も閉ざされた。このような不幸を繰り返さぬために再審の審理を生かしてほしい。
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