補正予算執行停止やダム事業中止、生活保護の母子加算復活など矢継ぎ早の政策転換で「政権交代」を実感させる鳩山政権だが、まだ具体的な成果を挙げているとは言えない。「国民生活が第一」とするマニフェスト(政権公約)をいかに具体化するか、一層の努力が求められる。
鳩山由紀夫首相は26日、就任後初めての所信表明演説で、官僚依存の仕組みを排するため「戦後行政の大掃除」を断行すると強調した。政治主導の新しい政治に転換し、「今こそ日本の歴史を変える」と意気込み、国政の変革を唱えた。
◆埋没する「普天間移設」
25日の参院統一補欠選挙で、民主党は神奈川、静岡両選挙区とも勝利した。新政権発足後、約40日間の評価とともに、衆院選圧勝の勢いを維持していることの表れだと言えよう。
国政の変革に対する挑戦に決意を示す首相だが、こと米軍普天間飛行場の移設問題をはじめとする沖縄問題では、担当閣僚間の発言に差異が目立つ。最後は自分で決めるとする首相だが、主導権を発揮しているとは言い難い。
所信表明でも、沖縄に関する言及は少なく、自公政権下の所信演説との明確な違いが見られない。普天間の移設先について言明はなく、「沖縄の方々が背負ってこられた負担、苦しみや悲しみに十分に思いをいたし、地元の思いをしっかり受け止めながら、真剣に取り組む」と述べるにとどめた。沖縄振興に関する姿勢については触れず、沖縄問題が埋没してしまったかのような印象さえ受ける。
外交では「緊密かつ対等な日米同盟」を提唱するが、日本の意向を適切に示すことができる「イコール・パートナー」として米国との重層的な深化が求められる。
普天間移設について、公約の「沖縄ビジョン2008」で民主党は明確に「県外、国外移転」の検討を打ち出し、選挙前の党公約でも「現行案の見直し」を明記した。
にもかかわらず、最も公約履行に前向きだったはずの岡田克也外相が「県外移転は考えられない」として、嘉手納基地統合案を含む県内移設を表明した。
米政府要人の来日後の突然の“軌道修正”ともとらえられるが、米政府の恫喝(どうかつ)的外交に屈したわけではないだろう。そのような姿勢では、果たして対等な日米関係が構築されるはずもない。
アジア地域の安全保障については、日米同盟が日本周辺を「争いの海」にさせない「基盤」となるとした。
だが、日本の果たす役割について言及していない。「対等」の具体策が示されておらず、生煮え感は否めない。具体的な構想をどう描くかが課題だ。
◆追及力問われる野党
鳩山政権は「郵政改革の基本方針」も閣議決定している。民営化路線を急転換するものだが、所信では「郵便局ネットワークを地域拠点に位置付け、郵政事業を見直す」とした。国民の多くが疑問視する官僚OBの新社長起用への説明責任は、今後の論戦で明確にしてもらいたい。
「政治とカネ」をめぐる問題に新政権はどう対応するのか。鳩山首相は、資金管理団体が会計帳簿に実際に献金をしていない人の名前を書くなど虚偽記載があった。これらに対し「政治への不信を持たれ、申し訳ない」と所信であらためて陳謝した。度重なる虚偽記載の疑惑解明に早急に取り組むべきだ。
一方、衆院選で大敗した自民党は臨時国会でどう攻勢に転じるのか。鳩山首相の献金問題や普天間移設をはじめとする外交・防衛などに焦点を当てることになろう。野党が鋭い追及で存在感を示してこそ、健全な議会政治は成り立つ。追及力を発揮し、論戦を深めてもらいたい。
鳩山首相は、「無血の平成維新」として、国政の変革に挑む決意を示した。自身の政治理念としての「友愛」を掲げ、国民の命と生活を守る政治の実現を訴えた。
優しい社会は、多くの国民の共感を得るだろうが、ぬくもりを感じられる社会づくりへの「行程表」は、所信では示されなかった。財政再建など国民の負担についても明確な指針はなかった。普天間移設問題や厳しい雇用状況など山積する課題解決に向け、国会論戦では逃げず、ぶれず、政治主導で堂々と説明責任を果たしてほしい。
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