仲井真弘多知事が3日から訪米する。主目的は日米地位協定の改定など基地問題の要請だ。
米軍の好意的配慮なしでは犯罪米兵の身柄もとれず、基地内立ち入りを制限され環境汚染の防止対策も阻まれる。
「敗戦と占領の残滓(ざんし)」といわれる不平等条約の抜本改定は、広大で危険な米軍基地と数万の米兵らと同居を強いられる県民にとって、積年の悲願だ。
だが、なぜこの時期の訪米か。8日には普天間基地の県内移設に反対する県民大会が開かれる。県民の「総意」を示すべき大会に、県民の代表たる知事が欠席する。
◆知事不在の県民大会
訪米は、渉外知事会の主催だが知事不在の県民大会は、画竜点睛を欠く。知事は大会にメッセージも送らないという。沖縄の県民世論がまたも二分されているかのような印象を与えかねない。
「基地撤去」を求める重要な大会に「知事」はよく欠席する。5年前の2004年9月12日、普天間基地に隣接する沖縄国際大学グラウンドで開かれた普天間基地撤去を求める市民大会に当時の稲嶺恵一知事の姿はなかった。
その1カ月前の8月13日、同大学に米軍大型ヘリが墜落し爆発・炎上した。乗員3人が負傷し、飛び散ったヘリの膨大な破片が住宅密集地を襲った。
破片は生後6カ月の赤子が眠るアパートの寝室に刺さり、ヘリの大型ローターが駐車バイクを破壊した。住民に死傷者が出なかったのは「奇跡中の奇跡」だった。
米高官も認める最も危険な基地「普天間」は返還合意から8年が過ぎたが返還条件の代替施設建設が難航する中での重大事故発生に、県内では普天間基地撤去のうねりが急速に高まった。日米両政府の中には「このままでは米軍の沖縄駐留すら困難になる」との強い警戒感すら高まった。
だが返還促進の機運を高め、日米両政府に県民総意をぶつける転機と好機を稲嶺知事は逸した。
稲嶺知事は「SACO合意の実現、辺野古への代替施設建設が危険除去の最短な選択」として、辺野古移転を「危険な基地の県内たらい回し」と批判する大会への参加を見送った。
「なぜ知事がいないのか」。県民総意を日米両政府や内外に訴えるはずの大会は肩透かしを食わされた。大会参加者からは「知事は振興策より県民の命を優先すべきだ」との厳しい批判もあった。「市民の声に耳を傾けず危険な基地の現実に目を背けるもの」と伊波洋一宜野湾市長は知事不参加を惜しんだ。
「危険除去の最短な選択」だったはずの辺野古代替施設建設は結局頓挫し普天間は放置された。
あれから5年、知事は仲井真氏に代わったが、稲嶺知事と同じ「一日も早い危険除去のためには県内移設もやむなし」との理由で県民大会参加を拒んだ。
◆県民代表の言葉の重さ
普天間問題に関する県民総意は、「県外・国外移設」であると、鳩山由紀夫首相は先月30日の参院代表質問で明確に答えている。
一方で、岡田克也外相は同日の定例会見で「(仲井真)知事は現行案(辺野古移設)が良いという考え」との認識を示している。
鳩山政権の理解では県民総意と知事意見は大きく異なる。
「県外移設がベストだが、一日も早い普天間飛行場の危険性除去の観点に立つと、県内移設やむなしと考えている」(30日、知事会見)というのが仲井真知事の意見だ。「県外がいいが、県内やむなし」とは二律背反に聞こえる。そんな知事のあいまいな表現が「誤ったメッセージ」を発信してはいないか。
30日の知事会見も違和感を覚えた。「会見」とは公式見解を述べる場だが、冒頭、知事は「2週間ぶりの懇談会です」と語った。マスコミ業界で「懇談」とはオフレコ(非公開)会見を意味する。7人の県選出・出身国会議員らの「硫黄島移転案」の政府要請も「事前の相談はなかった」と軽やかに語った。県政の代表に相談もなく頭越しの政府要請の事態を知事はもっと深刻に受け止めるべきだろう。
そんな知事が県民総意を確認する大会を欠席し訪米する。米国で普天間問題を聞かれたとき、知事はどう答えるか。まさか「県外がベストだが、県内やむなし」ではなかろう。もしそうなら米国は諸(もろ)手(て)を挙げて歓迎し、県民は怒り、知事は帰る場所を失いかねない。
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