「平和と慈悲のこころ」をテーマに講演するダライ・ラマ14世=5日午後、那覇市の県立武道館
ノーベル平和賞受賞者ダライ・ラマ14世の講演に聞き入る聴衆=5日午後、那覇市の県立武道館
チベット仏教最高指導者で、ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ14世が4日に初めて沖縄を訪れた。南部戦跡を回り、沖縄戦の歴史や平和への思いに触れるとともに、暴力や軍事力ではなく、対話による世界平和の構築を訴えたダライ・ラマ。5日に那覇市の県立武道館で行われた「ダライ・ラマ法王沖縄特別講演」(ダライ・ラマ法王沖縄招聘委員会、琉球新報社、沖縄テレビ主催)の講演内容を紹介する。
<講演採録>
私が本当に心を尽くし精進したいと思っていることが二つある。
第1は個人個人の心がかき乱されていることだ。個々人から家庭、社会、そして世界、さまざまなレベルにおいて問題が起きている。その問題の源は、各個人の心がかき乱されていることにあると思う。それを沈めることをしなければならない。それには各自の心の中に愛と慈悲の心を育(はぐく)むことが必要だ。
内なる心の平和を築き、根本的には私たち一人一人の人間に本来的に備わっている良き資質、愛や思いやりや優しさを高める必要がある。そのために私はその責任を負っている。私はこの世界に住んでいる60億人の1人であるわけだから、人間一人一人の幸せを高めるための努力をさせていただいている。
第2には、異なった宗教間の相互理解を深め調和を図ることだ。それを私の第2の使命としている。
宗教にはさまざまな違いがあるが、すべての宗教に共通しているのは愛や慈悲の心を高め、忍耐を修業し、持っているもので満足し自分自身を律した暮らしをする、これらにおいてすべての宗教はみんな同じメッセージを発信している。この共通点においてお互いの考え方を知った上で、力を共に合わせれば世界平和を達成できる。
平和とは単に暴力的なことが行われていない、戦争がないことではない。積極的な意味が含まれている。平和に向けて世界に良い変化をもたらすには必要な要素が二つある。
第1は人間が持つ優れた知性を働かせることだ。狭い視点に立ってものを考えるのではなく、より全体的な考え方をし、目先なことではなく、長い目で将来を考えることが必要だ。
第2には自分以外のすべての他人に尊敬の意を払うことだ。たとえ悪いことやネガティブなことをされることがあっても、その人のことを、この60億人の兄弟姉妹の一人と考えることによって、自分自身の将来は、ほかのすべての人々に依存し決まるのだと考えるのだ。そのことにより、相手に対する尊敬の気持ちを持つことが大事だ。
自分が幸せな将来を望むのであるならば、この60億の世界のすべての人たちのために、真摯(しんし)な態度で彼らにとって何が良いことか、と自分自身が考えていく態度が必要だ。それが、他者に対する尊敬の気持ちを維持し、他人の持っている権利をも尊重するということにつながる。自分以外の他の人たちというのは自分自身の一部なのだと考えることが非常に大切だ。自分以外の命あるものたちに対する尊敬の心を持ち、真摯な態度で心の奥底から心配する気持ちを持つことが大切だ。
私たち人間に備わっている知性を働かせることと、尊敬の意、この二つを結び合わせることが一番重要だ。
それができれば、人間たちがたとえどのような悲劇に直面しても、お互いの考えの間にどのような違いがあっても、それらの問題に対する平和的解決手段を必ずや見いだすことができる。平和はそのように達成できる。私たちの心に愛と慈悲の心を育むことで平和を達成できる。
すべての人間は母から生まれてきた。母の最大限の愛情によって生きてきた。母の存在ですでに存在している愛を大きくできる。みな同じ人間として、血の中に母から受けた愛情の種がある。究極的な心の幸せは内から出なくてはならない。心の奥底から、育てることで自然に自分に自信を持つことができる。教育を受けた人でも受けていない人でも、それができる同じ可能性を持っている。
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プロフィル
1935年7月6日、チベット東北部アムド地方(現・中国青海省)の農家に生まれる。本名はテンジン・ギャツォ。2歳でダライ・ラマ13世の転生者と認定され、5歳で14世に即位、15歳で政治、宗教の最高指導者となる。「ダライ」はモンゴル語で「大きな海」、「ラマ」はチベット語で「指導者、高僧」を意味し、慈悲の心の象徴である観音菩薩の化身としてチベット民族の中で広く慕われている。中国のチベット支配により、59年に24歳でインドに亡命、北インドのダラムサラにチベット亡命政府を樹立。以来、世界各地で慈悲と非暴力を説き続けている。89年にノーベル平和賞を受賞。「世界で最も影響力のある100人」(米「TIME」誌)で1位に選出された。
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