鳩山内閣や与野党国会議員、国民に、米軍基地の過重負担にあえぐ県民の悲痛な叫び、新基地強要に対する怒りは伝わっただろうか。
8日の新基地建設に反対する県民大会に大勢の人々が詰め掛け、米軍普天間飛行場の即時閉鎖・返還と、名護市辺野古沿岸への移設反対を訴えた。
嘉手納統合案に反対する嘉手納町民大会にも幅広い年代が集い「我慢の限界」を訴えた。爆音被害や基地負担増加を明確に拒否した。
「反米」ではない民意
県民大会には、伊波洋一宜野湾市長や翁長雄志那覇市長らが保革のしがらみを超え「県民党」的立場で参集。日米合意後13年も動かぬ普天間の「県内移設反対」を確認した意義は大きい。
普天間移設をめぐり日米合意とと民意が衝突する局面がしばらく続きそうだが、迷走する鳩山内閣は県民の声をしっかり受け止めてほしい。「県内移設反対」の民意を軽んじれば、日米関係への不信感が増幅するだろう。
鳩山首相は対米追従と批判されてきた戦後日本外交と一線を画し、「緊密で対等な日米同盟関係」の構築に向けてどう指導力を発揮していくか。民意を尊重しどう打開策を探るか、米側の恫喝(どうかつ)外交にどう対処するか、胆力が試される。
本紙には県内外から基地問題で投書やメールが数多く寄せられている。内容は普天間飛行場の即時撤去を主張するものから、東アジアの安定に果たす米軍基地の役割に理解を示す声までさまざまだ。
沖縄戦や異民族統治の経験から県民には「反軍・反基地」感情が根強い。度重なる米軍絡みの事件・事故、米兵犯罪で「嫌米」感情がしばしば高まるのも事実だ。しかし、県民は人命、人権を脅かす基地を否定しているのであり、決して「反米」ではない。日米両政府は、沖縄の世論のうねりを読み違えてはならない。
衆院選期間中の主張や選挙公約と裏腹に、鳩山民主党が安易に「県外・国外」の対米交渉を回避すれば、県民の失望、落胆は計り知れないものとなるだろう。
鳩山首相や、オバマ米大統領には、戦後沖縄の苦難の歩みに思いをはせてほしい。なぜ「安保」の名の下で、県民は生命の安全、平穏な暮らし、財産を脅かされ続けなければならないのか。米軍統治下でもないのに県民は、いまだに基本的人権を保障する日本国憲法の、蚊帳の外の存在なのか。
嘉手納町民大会で意見発表した嘉手納高校の新城武士君は「僕たちはそんなに大きなことを望んでいるわけではありません。普通に授業が受けたい、普通に部活動をしたい、普通に静かな嘉手納町で暮らしたい」と訴えた。こんなささやかな要求さえ認めぬ国家なら、もはや国家の体をなしていない。
ゲーツ米国防長官が普天間移設が実現しなければ、在沖米海兵隊グアム移転や嘉手納基地より南の基地返還も白紙に戻ると述べるなど、米側の対日圧力は強まるばかりだ。
“砂上の楼閣”と化す危険
この国の官僚は、辺野古移設の日米合意を蒸し返せば「日米同盟の根幹が揺らぐ」と危機感を強めている。しかし、日米関係を本当に危うくしているのは誰か。
普天間飛行場の県外・国外移設や在沖米海兵隊の削減・撤退などにより基地負担を軽減することが、長期的には日米両政府への信頼を回復し、日米関係を強固にする。国民の支持基盤が弱いまま日米関係を放置すれば、いずれ日米同盟も“砂上の楼閣”と化すだろう。
米兵少女乱暴事件を受けて1995年に開催された10・21県民大会以来、基地の整理縮小はすべての県民の願いだ。当時の大田昌秀知事は、日米安保が大切と言うなら、その負担を国民全体で分かち合うべきだと繰り返し提起した。
政治家も国民も、普天間移設・返還問題と真剣に向き合い、沖縄県民と負担を分かち合ってきただろうか。答えは「否」である。
普天間飛行場の移設受け入れの用意がないなら、せめて国外移設の実現に努力するのが筋ではないか。こうした努力なしに基地を沖縄に押し付けるのは社会正義に反し、差別以外の何ものでもない。
県民は、希望を捨ててはいない。首相は、軍事偏重の日米安保関係に対して「聖域なき変革」を挑むべきだ。国際協調や「核なき世界」の実現を掲げるオバマ米大統領と共に、未来を見据え、歴史的使命感をもって難局に立ち向かってもらいたい。
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