経済協力開発機構(OECD)が日本の経済政策に関する提言を発表した。傾聴すべき点は多々ある。中でも「給付付き税額控除」の導入を求めた点は重要だ。
所得が一定の額を上回る人には、その分に税金を課す。一定額に達しない人には逆に、足りない分を政府が給付するという考え方だ。
「ベーシック・インカム」(所得の最低限保障)と同じ発想だろう。税を通じて所得格差を是正すると同時に、人々に最低限の生活を保障する制度だ。
この効果は徴税の面にとどまらない。近年の市場原理主義が招いた格差拡大の流れを転換させ、社会の一体感を目指すというメッセージになる。鳩山政権は精査し、真剣に検討してもらいたい。
OECDはまた「教育は将来の経済的繁栄への戦略的投資だ」とも述べている。同感だ。民主党の打ち出した公立高校の実質無償化も同じ発想に基づくと言えよう。そもそも西欧福祉国家ではほとんどの国で、大学も含め、高等教育は無料だ。対極にあるのが米英で、日本も、教育への公的支出が極端に低いと指摘されてきた。十分な収入のある家庭だけに学ぶ権利が保障されているという現状は、社会の活力をも奪っている。
教育は、貧困の世代間連鎖を断ち切る手段だ。高校無償化にとどまらず、新政権は教育権の保障に腐心してほしい。
一方で、うのみにするのは危ういと思わせる提言もある。子ども手当の再考を促したのが一例だ。
OECDのグリア事務総長は「少子化対策と女性の社会進出を両立させる対策が必要」と述べ、子ども手当支給より保育所の待機児童対策に回すべきだとの考えを示した。待機児童対策も最優先だが、子ども手当をやめるかどうかは別問題だ。目玉政策をあっさり覆すようでは有権者の信頼を失う。
不透明な契約で諸外国より際立って高い価格で武器を買っている防衛費、日本一国で全世界の他の国々の合計を上回る米軍への思いやり予算など、切り込むべき財源はほかにあろう。
新政権に足りないのは経済哲学に関するメッセージだ。社会保障を重視し、格差を是正する基本方向は誤っていない。むしろそれを小泉構造改革に代わる経済政策の新たな骨格にすべきだ。そしてそれを明確に発信してもらいたい。
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