県内初の性犯罪事件の裁判員裁判となる女性暴行致傷事件の公判が那覇地裁で行われた。被害女性のプライバシー保護が尽くされたかを丁寧に検証し、同種事件の公判運営に生かしてほしい。
性犯罪は被害者が泣き寝入りするケースも多い。他人に事件を知られることが二重の苦痛を与えるだけに、市民が参加する裁判員裁判になじまないとする意見も根強い。従来の裁判以上に被害者の個人情報保護が求められるところだ。
裁判員の選任手続きや、公判では傍聴人に対して、被害者名が伏せられ、関連施設名も隠すなど、被害者が特定されないよう慎重な配慮がなされた。
ただ犯罪発生の市名や被害者の実年齢が示され、犯行状況の供述調書も裁判員制度の「法廷主義」に基づき朗読された。犯行状況が生々しく再現され、裁判員がまゆをひそめる様子も見受けられた。
犯行態様の過度の描写は被害者に新たな心痛を与える。従来は裁判官にとどめた調書内容を傍聴人も聞き知ることで、被害感情とともに被害者特定の憶測につながる懸念をもはらむ。論告のための立証活動とはいえ、必要最小限とする配慮を尽くすべきだ。
注目された判決は実刑でなく執行猶予付きとなった。事件は被害女性の必死の抵抗で暴行は未遂となった。被害者への金銭の被害弁償も行われた。検察側が論告で犯行の悪質さを指摘する一方、「被害者の処罰感情も当初ほど厳しくない」などと、被告に有利な事情にも言及したことが考慮されたものとみられる。
日本の裁判は性犯罪の量刑が欧米に比べて軽いという指摘が従来ある。市民感覚が反映される裁判員裁判に、性犯罪被害者支援の団体などは厳罰化を期待した。
一方で、弁護士会などには裁判員裁判制度そのものに過度の厳罰化を懸念する声もある。
今後の裁判員制度見直しの中で性犯罪を対象とすることの是非や被害者保護の在り方の検証とともに、性犯罪事件の適正な量刑についても議論を深めてもらいたい。
今回の女性暴行致傷罪の罪名は、本来の罪名を被害者に配慮し言い換えた新聞表記だ。性犯罪被害者の裁判や報道による「セカンドレイプ」をいかに回避するか、報道側の万全の配慮も問われていることを自戒したい。
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