4歳の女児が殺害された足利事件の再審判決で、菅家利和さんの無罪が確定した。逮捕から18年余り。裁判長が起立して謝罪する異例の公判だったが、人生を狂わせる冤罪(えんざい)の重さを検察や裁判所は正面から受け止め、教訓を生かす出発点としてほしい。
菅家さんは殺人容疑などで1991年12月に逮捕、起訴された。再審請求抗告審でDNA再鑑定の結果、遺体に付着した体液と菅家さんのDNA型が一致しないことが分かり、昨年6月に釈放された。
再審開始後、検察側は有罪立証をしなかったが、宇都宮地裁は証拠調べに力を入れ、取り調べの録音テープ再生や当時の担当検事に対する証人尋問を実施してきた。
審理状況から無罪が出る方向性は見えたが、判決で佐藤正信裁判長が「菅家氏が犯人でないことは誰の目にも明らか」と言明した。その意味は大きい。捜査段階のDNA鑑定に証拠能力を認めず、自白にも「信用性はなく、虚偽だ」と指摘した。
「誰の目にも明らか」なことが長い間、どうして明らかにできなかったのか。裁判制度の限界と片付けられては困る。捜査公判の在り方は問われてしかるべきで、猛省を求めたい。
裁判長を含む3人の裁判官が「菅家さんの真実の声に十分に耳を傾けられず、17年半もの間、自由を奪う結果になったことを裁判官として申し訳なく思う」と頭を下げたことは救いだ。
しかし、同様な冤罪を二度と起こさないとは言い切れまい。司法全体で思いを共有できていればいいが、現時点ではそこまで至っていない印象がある。
長く自由を奪っておきながら「誠にお気の毒」では済まされない。遺憾の表明にとどまらず、そこから踏み出して、今後どう取り組むかが大切になる。
再審は取り調べの「可視化」に向けた議論にも少なからず影響を与えたが、捜査側には抵抗感が見え隠れする。これでは冤罪防止も「永遠の課題」で終わってしまう。
冤罪には罪のない人の人生を奪うと同時に、真犯人の放置という重大な問題もある。謝って落着ではなく、事件の教訓が生きる仕組みの確立に努めるべきだ。
判決後「真っ白な無罪」と涙ながらに話した菅家さんの言葉を、肝に銘じて改革を進めたい。
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