鳩山由紀夫首相が4日、就任後初めて沖縄入りし仲井真弘多知事、稲嶺進名護市長らと会談、米軍普天間飛行場の移設先に関し「すべてを県外でということは現実問題として難しい。沖縄の皆さまに負担をお願いしなければならない」と述べ、県内移設に理解を求めた。国外移設の可能性についても「日米の同盟関係、近隣諸国との関係を考えたとき、抑止力という観点から難しく、現実には不可能だ」と否定した。
「国外・県外」を熱望する大多数の県民の期待を裏切る発言であり、落胆を禁じ得ない。首相は県民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、一部といえども県内に移設する考えは捨てるべきだ。沖縄での新基地建設は末代まで禍根を残す。
■疑わしい「抑止力」
首相は「政権をつくった後に、最低でも県外が望ましいと申し上げたことがある。県民の思いは国外、県外に移設をしてもらいたいという大きな気持ちになっていると理解している」とも述べた。
そこまで認識しているなら躊躇(ちゅうちょ)する理由はない。基地負担の軽減を求める沖縄の民意を追い風にして国外・県外移設の可能性をなぜ追求しないのか。「不可能」と言い切るのはあまりにも早計だ。
そもそも、普天間飛行場、もしくは代替基地を沖縄に置き続けることが「抑止力」になるという発想自体、極めて疑わしい。普天間飛行場の面積は嘉手納飛行場の4分の1弱で、十数機の固定翼機と三十数機のヘリコプターが常駐しているとされる。
これらの航空機は訓練などでたびたび国外に派遣されており、実質的に飛行場がもぬけの殻同然になる場合も少なくない。そのような基地がどうして抑止力として機能し得るのか。政府側から納得のいく説明は一切なされていない。
首相は、米政府や外務・防衛官僚の言い分を無批判に受け入れる前に、普天間飛行場が存在する意味をじっくりと考えるべきだ。
「県民におわび申し上げないといけない」と首相は述べた。謝られて「分かりました」と納得する県民は誰一人いないだろう。
普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校から基地を視察した後、住民との対話集会にも臨んだ。基地の撤去を求める市民の声を聞いても、なお「県内移設」と言い張るのか。
首相は昨年8月、衆院選に向けた主要6政党の党首討論会で「(普天間飛行場は)最低でも県外移設が期待される」と言明した。民主党のマニフェスト(政権公約)にも「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と明記した。
その結果、県内では衆院4小選挙区のすべてで民主党が公認、推薦、もしくは支援する候補が当選、自民党の衆院議員はいなくなった。
■基地集中は差別
「最低でも県外」という公約をほごにするなら、結果的に票集めのために甘言を弄(ろう)したことになる。「選挙詐欺」と批判されても仕方あるまい。
県民に公約違反をわび「県内移設」への協力を求めることが沖縄訪問の目的だとすれば、「一応は県民の声を聞いた」というアリバイづくりでしかない。
沖縄は太平洋戦争で本土防衛の「捨て石」とされ、日本で唯一おびただしい数の住民を巻き込んだ地上戦が行われた。20万人余に上る犠牲者のうち約9万4千人が沖縄の一般住民だ。
戦後は、米軍によって広大な土地が軍用地として強制的に接収され、今も沖縄本島の約18%を基地が占めている。国土のわずか0・6%にすぎない県域に全国の米軍専用施設面積の74%が集中する現状は「差別」としか表現のしようがない。
県民は戦後65年にわたり、米軍基地から派生する事件・事故に脅かされ、騒音被害に苦しめられてきた。拙速な判断は積年の不満を爆発させかねない。米軍にとっても敵意に囲まれた地域に基地を置くのは得策ではなかろう。
首相は5月末までに移設案を決めると明言してきたが、民意に沿わない決定なら問題の解決にならない。腰を据えて政府内の合意形成を図り、「国外・県外」案を米国に提示し交渉に臨むべきだ。今回の首相訪問が、政府内で検討されている「県内移設」を抜本的に見直す契機になることを切望する。
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