パブロ・ピカソが一夜で描き上げた絵画に、ニューヨークのオークションで約100億円の値が付いた。経済危機から脱しつつある欧米の美術品市場の活況とともにピカソのけた外れの偉大さを伝えてくれた
▼美術品として史上最高額となった「ヌード、観葉植物と胸像」は1932年の作品で、若い恋人マリテレーズがモデルという。希代の画家は複数の女性と浮名を流した。当時、ピカソは50歳だった
▼ピカソと接点をもった日本人画家に藤田嗣治がいる。パリで活動した藤田は13年、ピカソのアトリエを訪ねる。前衛的な作品に衝撃を受けた藤田は自身の画風の放棄を決意する
▼同時代を生きた2人の画家は戦争を題材に作品を残すが、その評価は正反対だ。ドイツのスペイン空爆に抗議の意を込めてピカソが37年に描いた「ゲルニカ」は、戦争の悲劇を描いた作品として教科書でも紹介されている
▼藤田は軍の依頼を受け、戦意高揚のために作品を描く。43年の「アッツ島玉砕」は傑作とされている。しかし、敗戦後に戦争協力者の批判を一身に受け、追われるように日本を去る
▼藤田の生誕120年の2006年に東京で大規模な展覧会が開かれ、「アッツ島玉砕」も出品された。歴史に翻弄(ほんろう)された藤田の視線の向こうにも「ゲルニカ」とは異なる形で、戦争の理不尽さが横たわっているように思う。
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