戦後65年の節目に、戦争体験を将来の「打たれ強い平和教育」に結び付けようと、新たな挑戦が始まっている。戦争遺跡の保存と活用である。取り組みを加速したい。
南風原町で19、20の両日、第14回戦争遺跡保存全国シンポジウムが開催された。主眼は戦争体験者が減る中で戦争遺跡を次代の“語り部”となる文化財としての保存・活用にある。
2004年の文化財保護法改正で近代の建造物に加え遺構や地下壕なども登録記念物(史跡)として保存可能になったが、残念ながら「戦跡」については前例がないという。
戦後65年の歳月を経て戦争遺跡は老朽化や再開発による破壊、解体、崩壊が激しくなっている。
行政の消極姿勢が戦跡の保存・保護・維持を困難にしているとの指摘があるが、県内では南風原町が1990年に沖縄陸軍病院南風原壕を町文化財に指定。8市町村で13件の戦跡が指定されている。
戦争体験者らが減り、沖縄戦の記憶が記録のみになり、生身の語り部がいなくなることに平和教育の後退や風化への懸念の声が教育現場から上がっている。
沖縄戦を指揮した牛島満・旧日本軍第32軍司令官の孫に当たる東京の教師・牛島貞満さんは「今の子どもたちは、映像を見ても戦争の実感を持てない。艦砲の破片など、モノを使うことが大事だ」と語っている。
体験者の喪失で悲惨な戦争、沖縄戦が風化し、現実味を失い、バーチャル(仮想)な史実となることへの警戒感がにじんでいる。
戦跡は「百聞は一見にしかず」「論より証拠」の継承力、語り部力を持つ。行政の動きを待たず、民間ではすでに戦跡の保護、保存、活用が加速度的に広まっている。
その動きに背中を押されたか、沖縄県も本年度から戦跡の保存と活用に向けた詳細確認調査に着手するという。将来的には国や県の指定文化財として戦跡の指定を目指している。
県がこれまでに実施した分布調査で、979件の戦跡が確認されているが指定には至っていない。
県の取り組みは市町村の施策に大きな影響を与える。県の詳細確認調査の行方を注目したい。
戦跡には被害と加害の両方の視点が必要だ。同時に戦跡を歴史修正主義や軍国主義の道具とされないよう不足する平和ガイドの養成も不可欠。育成を強化したい。
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