防衛省は宮古島や石垣島に陸上自衛隊の国境警備部隊を、与那国島に陸自の沿岸監視部隊を配備する方向で検討している。
東アジアの経済統合が加速している。中国と台湾は先日、経済協力枠組み協定(ECFA)に調印した。中台の経済的な相互依存関係が緊密になる中で、武力衝突はほとんどあり得なくなりつつある。
防衛省はこの変化が、アジアの安全保障環境に確実に変化をもたらすことを過小評価してはいまいか。
軍備増強を図る中国を、日本の安全への「脅威」と明確に位置付けることには大いに疑問が残る。
そもそも国境警備は海上保安庁の役割ではないか。海上保安庁とのすみ分けも不十分なまま陸自配備を行えば、アジア地域の不安定要因となる可能性は否定できない。
ソ連が崩壊した後に策定された2004年の防衛計画の大綱は、これまでのソ連脅威論に基づく北方重視戦略から、中国脅威論が登場。その後、島しょ部に対する侵略への対応として南西諸島重視戦略が描かれる。
防衛省は11年度からの新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画で島しょ防衛強化を打ち出し、宮古、八重山地域への陸自配備を書き込む方針だ。
安全保障問題に詳しい中京大学教授の佐道明広さんは、中国の軍事力増大の中心が海空戦力であるにもかかわらず、今回配備を想定されているのが陸自であることに疑問を呈している。
佐道さんが指摘するように、ミサイル駆逐艦や新鋭の戦闘機に対して陸自の小部隊が抑止力になるだろうか。疑問だ。そもそも宮古、八重山地域への直接的軍事侵攻は非現実的ではないか。
「島しょ警備(防衛)」という言葉は、65年前の沖縄戦を連想させる。沖縄戦前に策定された「沿岸警備計画設定上の基準」にその文言がある。沖縄を主要な警備地域として挙げ「住民の総力を結集して直接戦力化し軍と一体となり国土防衛に当たる」ことを求めた。
結局、島しょ防衛という発想は、住民を巻き込んだ悲惨な地上戦という結果しかもたらさなかった。
軍は軍の論理でしか動かない。存在し続けるためには、新たな存在理由を求めるものだ。
陸上自衛隊配備より、アジアの近隣諸国との友好関係と信頼醸成に努めることの方が先決だろう。
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