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学ぶ力 新聞で伸ばす NIE全国大会・熊本大会2010年8月1日  このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 twitterに投稿する

新学習指導要領の完全実施に向け、NIEの意義や在り方を確認する小学校分科会のパネルディスカッション=7月30日、熊本市の崇城大学市民ホール
中高一貫の特色を生かした「新聞スクラップリレー」の公開授業に臨む熊本県立八代高・八代中の生徒ら=7月29日、熊本市国際交流会館
新聞のテレビ欄を使った公開授業を行う高校分科会=7月29日、熊本市の熊本交通センターホテル

 第15回NIE全国大会(日本新聞教育文化財団主催)が7月29、30の両日、熊本市内で開かれ、過去最多の約1700人が参加した。県内からは教育関係者ら11人が参加。先進事例を紹介する実践発表で、県内から初めて北中城小の甲斐崇教諭が登壇した。今大会は従来の小中高に、大学と生涯学習を加えた5分科会が設定されるなど、NIE活動の多角的な広がりがうかがえた。来春以降に導入される小中学校の新学習指導要領で新聞活用をめぐる表記が充実したことを受け、子どもたちの学びと生きる力をはぐくむためのNIE活動の推進に向け、さまざまな討議が繰り広げられた。公開授業などの様子を報告する。

【小学校分科会】教科と結ぶ実践討議
 小学校分科会は崇城大学市民ホールで30日、小学校教諭らによる実践報告、パネルディスカッション「新聞で伸ばす学ぶ力、生きる力〜新学習指導要領とNIE」が開かれ、小学校教諭や校長、新聞社員5人が登壇した。5人は新聞を活用した授業実践が、子どもの学習意欲や表現力をはぐくむだけでなく、親子のコミュニケーションを図り、学級経営にも有効だと指摘。来春以降の新学習指導要領の完全実施に向け、各教科とNIEを結び付ける重要性を強調した。
 パネルディスカッションには大野朗久・熊本県山鹿市立山内小校長と下戸泰仁・鹿児島県立鹿屋市立鶴峰小教諭、助言者に遠山英一・熊本市立城南小校長と浜岸和洋・朝日新聞社熊本総局長が登壇し、島田美彦・熊本市立田底小教諭がコーディネーターを務めた。
 NIEの実践を始めた理由について下戸教諭は「読解力や表現力が弱い児童の実態があり、何とか克服したいと始めた」と説明。中学校社会が専門だった大野校長は「現実の社会を勉強することが大事だと訴えたくて、新聞の活用を始めた」と話した。
 下戸教諭は親子で新聞を読み、記事について互いに意見を深め合う「ファミリーフォーカス」の実践を報告。校内にある「NIEルーム」で、児童がそれぞれ作った新聞を楽しそうに読む姿を紹介し、「みんながつながっていく。(NIEは)学級経営に生かせると思う」と語った。
 新学習指導要領の内容を具体化するための新聞活用について、大野校長は「各教科とどうタイアップさせるかが重要。各教科の指導計画の中に新聞を活用できる部分がたくさんある」と強調。「教科書で学んだ学習内容や概念を、イメージ化することができる一つの素材が新聞だ」と指摘した。
 教育現場からの報告を受け、浜岸総局長は「教材として恥ずかしくない正確性、分かりやすさ、資料性を持つ新聞を作ることをあらためて決意した」と述べた。
 遠山校長は、新学習指導要領が来春以降実施となる一方、総合学習の時間は減らされることに触れ、NIEの実践を各教科に結び付けることの重要性を強調し、「新聞を教材として活用することが、子どもたちに確かな学力を身に付けさせ、豊かな心をはぐくんでいくことにつながる」と話した。

【中学校・中高一貫分科会】学年超え感想リレー
 「中学校・中高一貫」分科会は29日、中高一貫教育校の熊本県立八代高・八代中が、交換日記形式で新聞記事への感想などを書く「新聞スクラップリレー」の公開授業を行った。
 今年6月7日から7月9日まで、中学の1年2組40人、高校の1年1組41人、計81人を中高、男女織り交ぜ16班にグループ分け。その上で班ごとに(1)関心を抱いた新聞記事をワークシートに張る(2)記事を要約する(3)記事に対する自分の意見を書く(4)別の生徒にワークシートを渡す(5)受け取った生徒は前の生徒が選んだ記事などに感想を記入する―という手順を繰り返した。
 公開授業で高校生の草西茜さん、中学生の鋤田晃大君は「中学生には難しいと思うような政治経済の問題でも、よく考えて感想を書いたり、質問を投げ掛けてくれた。みんなで考えを深めることができた」「一つの記事に対するさまざまな見方が分かり、良かった」などと報告した。
 奥田和秀八代中教諭と共に指導に当たった森元博徳八代高教諭は「読ませることが目的だったが、書く力が付いた。1カ月でここまで変わるとは思わなかった。温度差はあるが新聞を手に取る生徒が増えた」と成果を挙げた。

【高校分科会】テレビ欄 過去と比較
 高校分科会は29日、熊本交通センターホテルで熊本学園大学付属高校の浦崎勇一教諭による公開授業「テレビ欄でメディアリテラシー」が開かれ、生徒がメディアとの付き合い方について考えを深めた。生徒は現在と20年前、30年前の新聞のテレビ欄を比較。昔はドラマが多かったが、現在はバラエティー番組が多い―など違いがあることを確認し、その背景や要因について意見を出し合った。
 浦崎教諭は生徒に、ドラマとバラエティー番組、それぞれの制作にかかる費用を挙げさせ「出演料にはどんな違いがあるか」と質問。生徒たちは「バラエティーは旬じゃない人も出ている」「出演料が安いから」などと答え、「ドラマの方が制作費が高そうだよね」とバラエティー番組が増えた背景に経済的な要因が絡んでいることを推察した。
 生徒は各番組の問題点についても考え、「(バラエティーは)言葉遣いが悪い」「ドラマは見始めるとやめられない」などと指摘。「テレビ番組と経済がつながっていることを初めて知った」「真実じゃない情報もあるから、自分で見極めていかないといけない」など、テレビ欄という素材を通して、番組の背景にある社会への向き合い方を学んだ。

【特別講座】選挙記事活用 判断力を育成 記者と教師が意見交換
 特別講座として、新聞記者と教師の交流講座「選挙報道とNIE」が30日に行われた。講師を務めた川上良尚・熊本工業高校教諭(NIEアドバイザー)は「報道に熱が入る選挙は、生徒にとって身近な話題になり、生徒の関心・意欲を引き出すことができる」などと報告。選挙に関する新聞記事を授業に利用することで、自らの将来を選択する思考力、判断力の育成につながると指摘した。
 熊本日日新聞の金子秀聡政経部次長は「選挙は民主主義の基本。国権の最高機関である国会の議員を選ぶことは重要であり読者の関心も高い。時間、人手、お金をかけ、新聞社を挙げて報道に全力投球している」と説明した。
 読売新聞東京本社の高木雅信政治部次長は、政策に関する質問に答えることで自分の考えに近い政党が分かる「日本版ボートマッチ」を同社ホームページで提供している取り組みなどを紹介した。
 会場では、衆院選に関する1紙の社説だけを活用した授業に対し北海道教委が昨年、「1紙だけだと偏った認識を持たせかねず不適切」との判断を示した問題について、琉球新報の名城知二朗編集局次長が「NIEに取り組む教師を萎縮(いしゅく)させないか危惧(きぐ)している」と発言。日本新聞教育文化財団の赤池幹NIEコーディネーターは「そういう姿勢を示したことが教師への圧力になっていると感じる。けしからんことで、動きを注視したい」などと述べた。


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