映画「キャタピラー」は太平洋戦争末期、両手足を失って戦地から戻った夫と妻を通して戦争の悲惨さと矛盾を突く。そのラストは衝撃的だ。中国戦線で女性を襲って殺した夫は罪の記憶にさいなまれ、悲劇的な死を遂げる。
戦争に正義はない。国益のために軍事が最優先される戦場で多くの兵士の心身に深い傷が宿る。それを証明したのが、米陸軍が発表した兵士の自殺に関する報告書だ。
米国が掲げる「正義」を振りかざしたイラク、アフガニスタンの戦闘などによって疲弊し、自ら命を絶つ兵士が急増している。2009年度(08年10月〜09年9月)の自殺者は過去最悪の160人だった。未遂は1713件に上る。
自殺や薬物の過剰摂取など、兵士自らの行為による死亡が、戦争による死者を超えていると認めた。
3分の1の兵士が抗うつ剤や鎮静剤を服用し、非合法な薬物汚染は06年度のほぼ2倍となり、家庭内暴力は過去6年間で約2・8倍に増えている。軍が「われわれ自身が敵よりも危険な存在」とまで言い切る異常事態に驚く。
兵士の自殺率が米国全体の平均(10万人当たり19・4人)より高いのは、ベトナム戦争以来のことだ。凄惨(せいさん)な闘いが続いたベトナム戦争は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の言葉を生み出した。
イラクやアフガンの戦闘によりPTSDなどを抱え込む兵士は増える一途で、自殺に歯止めがかからない。軍事大国・アメリカの深い病理が浮かぶ。
こうした傾向は陸軍だけではあるまい。特にイラク、アフガンの前線に兵士を送る在沖海兵隊にも同じ傾向はないだろうか。多くの海兵隊基地と兵士を抱える沖縄社会にとって、陸軍兵士の自殺急増と綱紀の乱れを「米本国のこと」と見過ごすわけにはいかない。
陸軍報告書は「自身の部隊の戦闘力を維持するために問題を意図的に無視していた」と、司令官らを批判した。米世論は自殺防止を後回しにした軍事優先の怠慢を厳しく批判している。
無益な戦闘での死者を減らし、米国の若者たちを自殺の瀬戸際から救うには、海外への大規模派兵をやめることが最も有効だろう。厳しい財政事情を背景に、米有力議員が主張する海外の駐留米軍、在沖海兵隊の大幅削減とともに、まず改めるべきは20世紀から続く米国の覇権主義である。
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