枝野幸男官房長官が福島第1原発から半径20〜30キロ圏内の住民に自主避難を促す方針を明らかにした。屋内退避指示を受け自宅にとどまっている住民の生活が物資不足などで困難になっているからだ。一方で「屋内退避の指示を出した時点と比べて(放射線量が)新たな段階に入ったわけではない」とも説明した。そうであれば、住民に生活必需品を届けるため最大限の努力をするのが政府の務めではないのか。
今頃になって避難を勧めるのは「屋内退避」という当初の判断の誤りを認めるに等しい。米原子力規制委員会(NRC)は16日の段階で福島第1原発の半径80キロ以内の米国民に予防的措置として避難を勧告。英国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドも17日に同様の勧告をした。日本政府の対応が後手に回った感は否めない。
屋内退避を続けているのは、ほかに行き場がなかったり、健康上の問題を抱えていたりする人が少なくないと思われる。自主的に避難してほしいと言われても、滞在先がなければ路頭に迷う。それ以前に、移動の足さえ持たない人がいる。自家用車はあっても燃料がなくて動けないケースもある。
政府は言いっ放しでは困る。受け入れ先の確保はもちろん、屋内退避指示区域の人たちを安全な場所に移送する態勢を整えるのは政府に課された重大な責務だ。飼養する家畜を放棄せざるを得ない農家などへの補償も欠かせない。
事態は深刻の度を増している。緊急消防援助隊による屋内退避区域での患者搬送を消防庁が要請したのに対し、「隊員の安全に不安が残る」として4県が、一時、業務を拒んだほどである。
屋内に避難している住民の不自由は推して知るべしだ。商業、物流の停滞を半ば放置してきた政府の無策ぶりに憤りを禁じ得ない。
混乱は30キロ圏内にとどまらない。福島第1原発から約60キロ離れた福島県郡山市に向かおうとした客を、タクシーが乗車拒否する事態も起きた。国土交通省が業界団体に是正するよう指導する始末だ。屋内退避区域では、今後も放射性物質の飛散が続くとみられている。自主避難の促進は事実上の「避難勧告」と言えるが、判断があまりにも遅い。
政府は、たとえ最悪の事態を迎えても住民の健康が損なわれることのないよう、慎重の上にも慎重を期して手だてを講じるべきだ。
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