海江田万里経済産業相が電力各社の安全対策は「適切」とし、原発再稼働の意向を表明した。説得力ある根拠を示さないままでは無責任だ。拙速にもほどがある。
そもそも福島第1原発の事故は収束のめどすら立っていない。事故調査・検証委員会は事故収束の一定期間後に最終報告をまとめる方針だ。全容解明は当分先のことになる。
津波の前に圧力容器が損傷していたという説もある。事故の原因は津波だけか、地震動も影響したのか、専門家でも意見が分かれているのだ。事故原因も分からないのに「安全」と判断するおかしさは、誰にでも分かる。
今回、「適切」と判断した安全対策は、津波と電源喪失への対処という点だけだ。それも原子力安全・保安院が6月7日に求めた対策を、電力会社が14日に報告し、15、16日に立ち入り検査して「妥当」と判断したという。
これほどの短期間で安全を確認できるのか。再稼働のため形ばかりの確認をした印象は否めない。
今回、露呈したのは津波へのもろさだけではない。耐震指針は十分だったのか。総額280億円も投じた放射能拡散予測システムはなぜ機能しなかったのか。こうした疑問が解消されないうちに再稼働するのは、住民不在の見切り発車と言うほかない。
原発を推進する経産省の傘下に、安全性規制を担う保安院がある矛盾も明らかだ。アクセルとブレーキを一つの役所が持つ、そんな政府がいくら安全を言い募っても、説得力があるだろうか。
そもそも電力不足解消のため原発が必要、という前提に疑問がある。日本の電力消費の最大値は1・7億キロワット前後だが、発電施設は火力だけでほぼ同じ程度、水力も含むと2億キロワットを超える。電力会社の地域独占をやめ、周波数を統一して電力を融通できるようにすれば問題は解決する。
海江田氏は「日本経済の発展のために再起動をお願いしたい」と述べた。安全性が立証されない中でのこの発言は、原発周辺地域は日本経済のためリスクを負え、と言うのに近い。
橋下徹大阪府知事の発言が事の本質を明らかにした。「海江田大臣をはじめ、経産省の皆さんを強制的に原発の周りに住まわせたらいい」。自らを安全圏に置いたまま、誰かに危険を押し付ける在り方は、哲学として間違っている。
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