『薩摩侵攻400年 未来への羅針盤』琉球新報社・南海日日新聞社編著 琉球新報社・980円
2009年は薩摩侵攻(1609年)から数えて400年という節目の年であった。ご承知の方も多いことと思うが、県内外では薩摩侵攻に関するシンポジウムが精力的に開催され、琉球新報と奄美に拠点を置く南海日日新聞では薩摩侵攻をキーワードに、コラムが連載された。本書はそれらコラムに若干の補遺を加え、一書になしたものである。主に「侵攻の道」「近世琉球の視座」の2部からなり、最新の研究成果をもとに薩摩侵攻と侵攻を契機に展開した近世琉球・奄美の藩政時代についてのさまざまな論点を紹介している。
本書では、近年の研究成果をもとに侵攻事件の歴史的背景が整理され、さらに侵攻後の近世という時代への視座がコンパクトに論じられている。例えば「武器統制」や「漂着人の偽装」、「〈鉄人〉民話」などの切り口から、思いもよらぬ薩摩支配の実相が紹介されている。
また、奄美にとっての薩摩侵攻も描かれている。薩摩侵攻以後の奄美において1609年はいかに語られ(150ページ)、何をもたらしたのか(172ページ)、沖縄とは異なる「侵攻」の歴史が存在したことを教えている。本書は、琉球と薩摩(日本)を対立軸に、単純化し語られてきた「侵攻」の歴史を、複眼的な視点から見直すきっかけを与えてくれている。
さらに本書には、薩摩侵攻という歴史への沖縄・奄美・鹿児島における思いと「語り」の現在が織り込まれている。収録されたそれら一つ一つは、1609年という歴史がいかなるかたちでわれわれと結びつき、思考させ続けているのかを垣間見せてくれる。
2009年という年に沖縄で、なぜかくも多くのシンポジウムが開催されたのであろうか。本書には、2009年という年に「侵攻」の歴史に仮託して噴出した沖縄・奄美・鹿児島の「何か」が描き出されているように思う。本書を通じて過去と現在の交錯をまなざしながら、それぞれの「未来への羅針盤」を見いだすことができればと思う。
(山田浩世・琉球大学特命助教)
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