矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授
福島第1原発事故で放射能に汚染された福島県内の土壌は、1986年のチェルノブイリ原発事故で健康被害が続出したウクライナ・ルギヌイ地区に匹敵する汚染濃度であることが矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授の分析で分かった。同地区は事故後5〜6年で甲状腺疾病と甲状腺腫が急増。9年後、子どもは10%の割合で甲状腺疾病が現れた。通常10万人中数人しか出ない子どもの甲状腺がんは千人中13人程度まで増えた。矢ヶ崎氏は「福島で同じような健康被害が出る恐れがある。子どもの遠方避難を含む被ばく軽減策に全力を挙げるべきだ」と訴えている。
福島県内の土地について文部科学省が8月30日に発表した詳細な汚染度(放射性セシウムの濃度)調査の結果を基に、ルギヌイ地区の汚染状況と郡山、福島両市の汚染濃度を比較した。
ルギヌイ地区はチェルノブイリ原発から西へ110〜150キロ離れた場所で、強く汚染された地域。ウクライナの汚染度区分は三つのゾーンに分かれている。移住の判断基準は国際放射線防護委員会(ICRP)基準を原則的に適用し「年間自然放射能を除いた1ミリシーベルト以上の被ばく」と設定されている。1平方メートル当たりで、55万5千ベクレル以上が「移住義務」、55万5千ベクレル未満〜18万5千ベクレルが「移住権利」、18万5千ベクレル未満〜3万7千ベクレルが「管理強化」となっている。
ルギヌイ地区の汚染程度は「移住義務」と「移住権利」を合わせた地点数の割合は13・3%に対し、郡山は14・4%、福島市は33・0%。両市の方が汚染度の高い地域が多い。汚染の少ない「無管理地域」の割合はルギヌイ地区が1・5%で、郡山市27・1%、福島市10・6%と両市の方が多い。濃淡分布の幅の違いはあるが平均値などをみると「汚染度はほぼ同程度とみなせる」という。
ルギヌイ地区では、子どもの甲状腺疾病の罹患率が上がったほか、同地区全病院全ての患者に免疫力の低下や感染症の増加・長期化などが確認された。90〜92年の死亡率を事故前の85年と比べると、死期は男性で約15年、女性で5〜8年早まっていた。
矢ヶ崎氏は「ウクライナの法定放射能定義はICRPの基準に従っているのに、その基準は健康管理の点ではあまりにも甘すぎたことを示している。健康被害は年間1ミリシーベルト以下でも深刻だ。だが日本政府は緊急時の措置として20ミリシーベルトを設定した。許し難い。住民を『被ばくされっぱなし』の状態に置く『棄民』政策そのものだ。国民の健康管理の面から、その点は厳しく追及されねばならない」と強調した。(新垣毅)
<用語>シーベルトとベクレル
シーベルトは人間が放射線を浴びた時の影響を表す単位。国内の自然状態で年間約2・4ミリシーベルト浴びるとされ、これ以外に人工的には年間1ミリシーベルトが一般人の許容限度とされる。放射線作業者は別の基準がある。ベクレルは放射能の強さや量を表す単位。1秒間に原子が一つ崩壊する値が1ベクレル。シーベルトとベクレルの関係は電球に例えると、光の強さそのものがベクレル、距離により異なる明るさに当たるのがシーベルトと説明される。
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