何という大盤振る舞いだろうか。日米首脳会談で野田佳彦首相がした約束は、米国の求めるもの全てを提供するのに近い。
環太平洋連携協定(TPP)交渉参加協議入りを表明したばかりでなく、普天間飛行場の辺野古移設に関する環境影響評価書の年内提出まで約束し、米国産牛肉の輸入規制緩和も加わった。
共通するのは国民の生命・安全に関わるという点だ。国内関係当事者が納得したものは一つもない。TPPをめぐるどさくさに紛れて他の約束を潜り込ませた、とも言えよう。国民を置き去りにしたという批判に、首相は反論できるだろうか。
対米配慮最優先の外交は「国民益」を損なう。真に国民のためになる外交はどうあるべきか、首相は原点に戻って再考してほしい。
普天間について、「沖縄の負担軽減」と言いつつ沖縄に基地を押し付けるのは矛盾でないのか。過去の交渉で米国が容認した県外への海兵隊移転を日本側が本気で検討せず、沖縄以外の都道府県に一度たりとも正式打診しなかったのはなぜか。首相は説明できまい。
説明できないのは、これらが差別の証拠だからだ。県民を犠牲に供する交渉はやめてほしい。
輸入牛肉の規制緩和も不信を招きかねない。牛海綿状脳症の問題が浮上した後も、米国からの輸入品に危険部位の背骨が混入したことがある。全品検査をしていない以上、輸入対象牛の月齢規制を緩和すれば、国民のリスクはその分高まる。政府の仕事は食の安全を確保することではないのか。
TPPをめぐり首相は「アジア太平洋の経済のルール作りをやり遂げる」と述べたが、そもそも中国も韓国もインドネシアも入っていないTPPが「アジアのルール」になるのか。
医療でも、政府は当初、混合診療などの論議は含まれないと説明していたのに、今ごろになって「可能性は排除されない」と言い出した。米国の保険会社の事業拡大のための交渉になるのではないか。
食品でも、遺伝子組み換え食物大国である米国からの輸入拡大のため、遺伝子組み換え食品の明示が非関税障壁として米国から攻撃されるのではないか。
これらの疑問に政府は答えていない。TPP参加は拙速そのものだ。政府は、国民の安全を交渉の取引材料にしないでもらいたい。
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