法や倫理に反するか否かの境界線上にある疑惑を表す色に「灰色」がよく使われる。周辺の状況を広く深く見極めることで行為の輪郭と目的が浮かび上がり、限りなく「黒」に近づくことがある。
沖縄防衛局による宜野湾市長選挙の有権者リスト作成、選挙介入疑惑はこれに当てはまる。
12日投開票の宜野湾市長選をにらみ、沖縄防衛局が有権者である職員と、有権者の親族がいる職員のリストを作成し、真部朗局長が職員68人を集めて講話した。事実は防衛省の調査で裏付けられた。
核心はまず、勤務時間内に組織ぐるみで有権者リストが作成されたことにある。職員の親族という個人情報まで差し出させようとした狙いは何か。防衛本省の関与はなかったのか。
米軍普天間飛行場の県内移設を至上命令とする防衛省の意思が、市長選挙に体現するように仕向けたという疑念が深まるばかりだ。
さらに、2010年の名護市の市長選か市議会議員選でも真部氏は同様の講話をし、棄権せずに投票するよう呼び掛けていた。
基地問題が争点となる県内の主要首長選や国会議員選挙で、投票を促す行為が繰り返されていたという防衛局OBの証言もある。
民主主義の根幹を支える選挙の裏面で国策の浸透を図る動きが常態化していた。民意をゆがめかねない防衛行政の異様さが際立つ。
防衛省設置法によれば、防衛局は全国8カ所に置かれ、米軍用地の取得や自衛隊装備品の調達、米軍関係の物品調達などを担う。
有権者リスト作成は、沖縄防衛局の本来業務とは全く関係ない。親族に無断で個人情報を収集し、その政治利用は違法性を帯びる。
真部局長は親族に問われた際、職員が局の立場を説明できるように講話したと釈明しているが、安全保障政策に理解がある候補者への投票に誘導する潜在的意思があると考えるのが自然だ。
防衛省は「特定候補への投票は依頼していない」と説明し、地位を利用した選挙運動ではないと言い張るが、額面通り受け取る県民はいまい。
検証チームをつくった防衛省は猛省し、膿(うみ)を出し尽くすべきだ。官僚主導の軽い処分で済ませば、選挙妨害の影響を被る2氏の陣営と県民を愚弄(ぐろう)することになる。局長更迭は当然だが、とかげのしっぽ切りに終わらせてはならない。
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