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原発事故1年 民意反映の仕組み必要 エネルギー法制改廃を2012年3月10日 
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 東日本大震災に伴い、大量の放射性物質を拡散させた東京電力福島第1原発事故は、発生から1年を経た今も収束の確たる見通しが立っていない。警戒区域や計画的避難区域に指定され、住居を離れた人はおよそ8万7千人に及ぶ。
 原発がなければ辛酸をなめることはなかった。東電は、住まいや職を奪われ、健康を脅かされた人々が受けた損害を、全資産を投じて補償すべきだ。責任逃れは許されない。政府に対しては、原子力政策の誤りを全面的に認め、原発に依存しない社会の実現に向け、エネルギー政策を抜本的に見直すよう求めたい。
■過去のうそ謝罪を
 今回の事故で明白になったのは、「原発は絶対安全」という政府や電力会社のうたい文句が、危険を覆い隠すための虚言にすぎなかったという事実だ。政府は長年にわたり国民を欺いてきたことをまずわびなければならない。
 現実はどうか。野田佳彦首相は昨年9月の所信表明で「エネルギー基本計画を白紙から見直す。中長期的には、原発への依存度を可能な限り引き下げていく、という方向性を目指すべきだ」と述べた。一方で、新成長戦略に基づきベトナムなどへ原発の輸出を進めている。支離滅裂だ。国内未曽有の原発事故に対し反省の色が見られない。
 政府が早急に手を付けるべきなのは原子力法制の改廃だ。エネルギー政策基本法は、エネルギー需給に関する基本的な計画(エネルギー基本計画)の策定を政府に義務付け、計画案の作成に際し、経産相が諮問機関である総合資源エネルギー調査会の意見を聴くことを定めている。事実上、官僚の意を受け経産相が任命した調査会が、日本のエネルギー政策を方向付けていると言っても過言ではない。
 2010年策定の現計画は、原子力を「供給安定性・環境適合性・経済効率性を同時に満たす基幹エネルギー」と位置付けた。
 福島第1原発事故が浮き彫りにしたのは(1)危険で安定感に欠ける(2)放射性物質の放出で環境を破壊する(3)事故時の賠償、除染、廃炉、使用済み燃料処理等の費用を勘案すると経済的ではない―という原子力の実情だった。
 本来なら、現実離れした計画を是とした委員は調査会の構成メンバーから退いてもらうべきだ。
 共通の利益で結び付いた「原子力村」の面々が政策立案の中枢にあり続けるなら白紙からの見直しなどおぼつかない。調査会に過大な影響力を持たせた現行制度を改め、国民の意思が反映される仕組みに転換することが急務だ。

■除染に全力尽くせ
 エネルギー基本計画は30年までに14基以上の原子力発電所を増設すると明記しているが、今や絵に描いた餅だ。今後、原発の新設は国民の理解を得られまい。既存原発の再稼働に当たっても、大規模事故の際に被害が及ぶ恐れのある全ての地域の首長、議会の同意を義務化すべきだ。
 原子力研究、開発、利用に関する基本方針となる原子力政策大綱も原発事故前と同じ委員が見直しに携わっている。納得がいかない。
 原子力に代わって太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを普及させなければならない。その促進のためには、電力会社が地域独占し一手に担っている発電と送配電の分離が欠かせない。
 福島第1原発では燃料の冷却が続いているというが、依然として放射性物質の放出が見られる。
 原発内部の損傷や燃料の状態は正確に把握できない。高濃度の放射性物質を含んだ汚染水の処理装置も耐久性に不安がある。原発事故がもたらした災いを取り除くには長い年月を要する。
 廃炉に向けた作業状況を8日に視察した佐藤雄平福島県知事は「避難者が帰還し県民の不安がなくなるのが収束だ。世界の英知を集めて除染を進めなければならない」と述べた。政府は知事の要望を全て実現するよう努めてほしい。


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