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全国世論調査 「脱原発」は国民の総意だ2012年3月19日 
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 これほど明瞭に民意が表れることはめったにない。原発への依存度を段階的に下げ、将来は原発をなくす「脱原発」への賛成が、日本世論調査会の全国面接世論調査で80%に達した。
 この種の世論調査では、5割を超えると民意は明確と見るのが普通だ。8割というのはほとんど例がないほどの高さである。脱原発はもはや国民の総意と言ってよい。政府はその重みをかみしめ、脱原発へ大胆にかじを切るべきだ。
 昨年7月、当時の菅直人首相は「脱原発」を打ち出したが、党内や閣内から「唐突」と批判されるや、「私的な思い」とトーンダウンした。さらに「脱原発依存」と「依存」の2文字を付け加え、方針を意味不明にした。世論調査の結果はこうした政府の迷走ぶりを断罪したと言える。
 世論調査では原発停止後の電力供給への不安もうかがえる。だが京都大学原子炉実験所の小出裕章氏によると、日本の発電所の設備総量からすれば、原発を全て止めても火力発電所を7割稼働させれば最大需要を賄える。能力的にも脱原発は可能なのだ。
 福島第1原発事故はわれわれの社会の深刻な欠陥を浮き彫りにした。原発に依存するエネルギー政策の在り方がその一つ。「原子力村」に象徴される利権の構造もそうだし、電力会社や政府、専門家の無責任ぶりもあらわになった。
 中でも重要な問題は「被害と受益の不一致」であろう。福島第1原発で発電した電気は、福島では使われず、関東で使われていた。中央は利益だけを享受してリスクは負わず、地方は一方的に危険を背負わされる、という構図だ。
 沖縄の基地問題にも通底するこの構造を続けるのはもはや不可能だし、倫理的にも間違っている。
 政府は、「将来的には原発への依存度を下げる」と言いながら、他国への原発プラントの輸出については積極的だ。輸出の経済的利益だけを享受し、他の国が背負うことになるリスクは見て見ぬふりをするに等しい。この「被害と受益の不一致」も倫理的に許されまい。
 ひとたび原発で事故が起きれば被害は県境だけでなく国境も越える。中国や台湾なども原発に前のめりだが、ことは東アジアの住民全ての生命に関わる。政府は脱原発を速やかに掲げ、国際世論もその方向に導いてもらいたい。


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