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密約訴訟判決・“疑惑”直視しない司法 国家の欺瞞不問に付すのか2007年3月28日  このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

 沖縄返還交渉をめぐる日米間の密約に関する「外務省機密漏えい事件」で国家公務員法違反(秘密漏えいの教唆(きょうさ))の罪に問われ有罪とされた元毎日新聞記者西山太吉氏(75)が国に謝罪と3300万円の慰謝料支払いを求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。
 加藤謙一裁判長は除斥(時効)期間が経過し請求権が消滅したとして西山氏の訴えを棄却。密約の存否に言及しなかった。
 判決で密約の存在が認定されるかどうかが焦点だったが、一切判断が示されなかったことは、極めて残念だ。司法には、「国の疑惑」に正面から向き合い、判断を示してほしかった。

■国がついたうそ
 西山氏は1971年、親しい外務省の審議官付女性事務官から愛知揆一外相とマイヤー駐日大使による会談内容の機密電信文を入手。それは、返還協定で「米国政府が沖縄の土地原状回復費400万ドルを自発的に支払う」とされたにもかかわらず、400万ドルを日本側が肩代わりするという密約の存在を示すものだった。西山氏は疑惑を報じ、社会党が同問題を国会で追及した。
 ところが、政府が国民を欺いて密約を交わしたという重大問題が、いつの間にか機密漏えい事件に矮小(わいしょう)化された。女性事務官は国家公務員法の守秘義務に違反した秘密漏示の罪に、西山氏は秘密漏示そそのかしの罪に問われた。
 女性事務官は罪を認めて有罪判決を受け、西山氏は1審で無罪、2審では有罪に。最高裁は当初から秘密文書を入手するために利用する意図で女性事務官と親密になった―などとして上告を棄却し、有罪判決が確定した。
 起訴状に「密(ひそ)かに情を通じ」との文言が盛り込まれたことで、男女の醜聞が前面に出て、主権者である国民を欺いたであろう政府への追及がストップしてしまった。報道機関の側にも反省すべき点が多い。
 2000年5月、02年6月に密約を裏付ける米公文書が見つかったことを受け、西山氏は「公文書で密約の存在が証明されたが、名誉を損なわれ続けている」などとして05年4月、国を相手に訴訟を提起した。
 西山氏側は国会承認を経なかった密約は違憲行為で違法秘密であり国家公務員法の保護の対象に当たらないと指摘。男女のスキャンダルに仕立てた訴追で政府は密約に対する追及をかわし、検察側の偽証によって刑事裁判で誤った判決を下させたことは違法で不当―などと主張していた。
 これに対し、国側は密約の存在の認否をせず「仮に密約があったとしても原告の有罪無罪を左右しなかった」「原告主張の違法行為が仮にあったとしても除斥期間の適用で賠償請求は認められない」と反論した。

■不可解な密約否定
 1971年当時、外務省アメリカ局長として対米交渉に当たった吉野文六氏は06年2月、「返還時に米国に支払った総額3億2000万ドルの中に原状回復費用400万ドルが含まれていた」と言明し、日本側の肩代わりを認め、密約の存在を肯定した。
 吉野氏は、密約を裏付ける米公文書が2000年に見つかった際、河野洋平外相(当時)から「外務省としては話せないから、否定することを了解してくれ」と要請されたことも琉球新報社の取材に対し明らかにしている。
 不可解なのは政府の対応だ。いくら証拠を突きつけられても、関係閣僚は判で押したように「密約は存在しない」と繰り返している。
 吉野氏の新証言にも、麻生太郎外相は衆院外務委員会で「なかったことにしてくれ、と河野外相が頼んだというような話だが、そのようなことはない」と否定した。
 この期に及んで密約の存在を否定し続ける政府の態度は、国民の知る権利に応える姿勢が欠如している。一体、いつまでしらを切り通すつもりなのか。
 真実は一つしかない。政府は、国民を欺いていたのなら潔くそれを認め、密約の実態、経緯を公表すべきだ。国家による欺瞞(ぎまん)があったとすれば、このまま不問に付されていいはずがない。政府は説明責任を果たしてもらいたい。
 時効で請求権が消滅しているという理由で訴えを退け、密約の存否に関し一切言及しなかった今回の判決からは、歴史の真実に向き合おうという姿勢が感じられない。控訴審の行方を注視したい。


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