靖国神社にA級戦犯を含む合祀(ごうし)を、厚生省(当時)が積極的に働き掛けていたことが、国立国会図書館が公表した「新編 靖国神社問題資料集」で明らかになった。
政府は1978年に行われたA級戦犯の合祀経過について「承知していない。神社側の判断」としてきた。しかし資料で、厚生省は58年ごろから戦犯の合祀を神社と議論、69年にはA級戦犯も「合祀可」としたことが判明した。政府は国民に、合祀をめぐる経緯を隠し続けてきたことになる。
さらに悪質なのは、59年にはB、C級戦犯の合祀を、世論の反発があることを懸念し、公表しないよう神社に求めていたことだ。ただ隠していただけでなく、世論、国民から反対されることを想定し、神社側に隠ぺいを指導するのは「国民無視」「国民主権」をないがしろにする大きな問題だ。
また重要なことは、47年、政教分離の原則がうたわれた新憲法が施行されたにもかかわらず、政府が積極的に合祀にかかわったのは、その原則に抵触する憲法違反だろう。
それでも安倍晋三首相は「問題ない。合祀を行ったのは神社だ。(旧厚生省は)情報を求められ、(資料を)提出したということではないか」と、憲法の政教分離の原則には抵触しないとの見解を示した。塩崎恭久官房長官も「最終的に合祀の判断をするのは神社だ」と述べる。
新たな事実を突きつけられても開き直る政府の姿勢は、沖縄返還交渉をめぐる日米間の密約に関する「外務省機密漏えい事件」とうり2つに映る。
密約は日本側の元交渉当事者が証言、米国の公文書でも存在が確認されたのに、政府は密約の存在を否定し続けている。
それにしても国の隠ぺい体質は根深い。
国内だけの問題にとどまらない。A級戦犯の合祀をめぐっては中国、韓国などからの批判が強い。侵略や植民地支配を受けた両国にとって、それを指導したとして裁かれたA級戦犯の合祀は、日本が去る大戦を反省していないと受け止めるからだ。
A級戦犯の合祀に政府がかかわっていた事実は、せっかく改善に向かっている両国との関係に悪影響を与えないか、懸念される。
案の定、韓国政府は、日本政府が合祀にかかわっていたことに強い不快感を表明した。
安倍首相が昨年10月、中国の胡錦濤国家主席と会談した際の両国の共同プレス発表には「歴史を直視する」ことが盛り込まれた。
合祀の経緯を明らかにするのも「歴史を直視する」ことだろう。同時に、政府には隠ぺい体質からの脱却を求めたい。
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