在日米軍再編への協力度合いに応じて関係する地方自治体に再編交付金を支給することを柱にした米軍再編推進法が23日、成立した。日米両政府が2006年5月に合意した在日米軍再編計画の円滑な実施が狙いである。
同計画は基地所在市町村の「負担軽減」につながるとされている。しかし、米軍普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設するなど「負担軽減」には程遠い。
再編が計画通り終了したとしても、沖縄の在日米軍専用面積は75%から70%になるだけ。負担軽減といいながらも、嘉手納基地にはミサイル防衛のためのパトリオットの配備、最新鋭ステルス戦闘機F22Aの一時配備など抑止力強化の押し付けだけが目立つ。
障害は政府の姿勢
同法は、防衛相が関係自治体を「再編関連特定周辺市町村」に指定し(1)再編計画受け入れ(2)環境影響評価の着手(3)施設整備の着工(4)工事完了・運用開始―の4段階に分けて「再編交付金」を上積みするのが柱。特に負担の重い市町村には、公共事業での国の補助率をかさ上げする。
協力する自治体に再編交付金を与え、反対する自治体には交付しない「アメとムチ」を制度化している。地方自治の面からも大きな問題をはらんでいる。
1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、普天間飛行場の返還、移設を決定し、地元に振興策を提供したものの、移設作業が進展しなかった「反省」が新たな制度創設の背景にあるといわれる。
SACO合意が実施できなかったのは、県民から県内移設への反発があったからにほかならない。
今回の再編計画でも普天間飛行場は県内移設であり、県民の反発は依然として根強い。県内移設は県民の多くが望んでいないことを政府は理解するべきだ。
政府は再編計画を基本的に受け入れた名護市の修正要求にさえ、応じていない。かたくなな姿勢を改めるべきである。「円滑な実施」の障害は海上自衛隊の掃海母艦まで動員して強力に作業を進めるような政府の姿勢にある。
成立した再編推進法は問題点を残したままだ。
交付金を支給する自治体の選定基準は明確でない。名護市を支給対象にするかでは久間章生防衛相と同省幹部で一致していない。客観的な基準作りはこれからである。
日本が負担する在沖米海兵隊のグアム移転費の59%(約7200億円)の具体的な内訳も明らかではない。
それに、法案審議に要した時間は衆院安全保障委員会は約16時間半、参院外交委員会は約16時間でしかない。これで十分に審議を尽くしたといえるだろうか。
自治体の要望配慮を
航空自衛隊のイラク派遣を2年延長するイラク復興支援特別措置法改正案の審議を控えていることが成立を急いだ要因に挙げられている。
安倍晋三首相の日米関係を重視する姿勢も性急な成立につながったといえよう。安倍首相は4月末のブッシュ米大統領との会談で、米軍再編の着実な実施を約束した。
その直後に開かれた外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも、それを確認している。
米国との合意の円滑な実施が関係自治体の理解を得ることより、最優先すべきということなのだろうか。
再編計画に異を唱えているのは沖縄だけではない。
山口県岩国市は神奈川県の厚木基地からの米空母艦載機移転に反対している。
「アメとムチ」が再編推進法の本質であり、久間防衛相は岩国市に対して交付金を支給しない考えを示している。
しかしながら、同法は基本理念として「駐留軍等の再編に対する幅広い国民の理解が得られるよう配慮されなければならない」と明記している。
仲井真弘多知事は再編計画の実施について「地元の理解と協力が不可欠で、普天間飛行場の移設問題をはじめ、地元の意向に配慮して進めることが円滑な実施につながると考えている」と述べている。
それは、多くの関係自治体が政府に求めていることである。法の基本理念にのっとり、関係自治体の要望に十分に配慮することを政府に求めたい。
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