防衛省への装備納入業者との癒着疑惑が取りざたされる同省の守屋武昌前事務次官に対する証人喚問が、衆院テロ防止特別委員会で行われた。
前次官と親密な関係にあった元専務が経営を取り仕切っていた防衛商社「山田洋行」から受けていた利益供与は、どの程度の頻度で行われていたのか。その見返りに業者に何をしたのか。守屋氏は、利害関係者とのゴルフについて「大変不適切な行為だった」と述べ、業者とのゆがんだ関係が明らかになった。
だが接待を受けた防衛商社に対しては、装備品調達などで便宜を図ったことは「一切ない」と疑惑の核心部分を全面否定した。
記憶たどる努力を
喚問の様子は、約2時間半にわたってテレビで中継された。守屋氏の説明を聞いて、どれだけの国民が納得しただろうか、大いに疑わしい。
守屋氏は「責任を痛切に感じている」のであれば、もっと積極的に実態に踏み込んで説明すべきだった。肝心な部分については、なるべくぼかし、あいまいに済ませたい。そんな姿勢に映った。
「承知していない」「記憶にない」と逃げるのではなく、むしろ記憶をたどる努力をし、誠実に語ってほしい。
能吏、実力者とうたわれ、防衛省の事務方トップに上り詰めた守屋氏である。自分に向けられた疑惑の数々を、たとえ否定するにしても、その根拠を示すなど論理的に言葉を尽くして説明しない限り説得力を持ち得ない。
証人喚問で問われたポイントは3点だ。業者とのゴルフ疑惑、海自補給艦が2003年に米補給艦に給油した量の訂正問題への関与、業者への便宜供与はあったのかどうかの3つである。
守屋氏は、喚問前に既に元専務とのゴルフ交際については認めている。自費であっても防衛省の利害関係者とのゴルフを禁じている「自衛隊員倫理規程」に違反するとの認識を持っていたことも明らかにしている。
そのせいか、守屋氏のゴルフ接待についての説明は、比較的よどみがなかった。
元専務とゴルフを始めたのは防衛政策課長だった12年前にさかのぼることや、回数は「200回を超える」ことを明かした。この5年間では「多い時は月に4回、100回を超えた」と語った。
ゴルフは守屋氏の妻も一緒にプレーすることが多く、その際に偽名を使い、ゴルフセットを夫人分も含めて二度もらっていた。元専務と賭けゴルフや賭けマージャンをし、旅行の接待も受けていた。
それにしても、公務員の倫理に触れる行為がこれほど頻繁に安易に繰り返されていたとはいまさらながら驚かされる。公務員の基本中の基本に目もくれなかったことになる。
地に落ちた信頼
巨額の防衛装備をめぐる契約が不正にゆがめられることへの危惧はどうなっていたのか。あきれるほかない。
守屋氏は自身の問題が新テロ対策特別措置法の障害になっていることへの責任に言及したが、それ以上に深刻な問題が別にある。
実力部隊を抱える防衛行政への信頼が地に落ちたのである。責任は極めて重大だ。当然ながら守屋氏を重用してきた歴代の防衛庁長官・防衛相の責任も問われてしかるべきだ。
次期輸送機(CX)エンジン納入などをめぐる便宜供与は「一切なかった」とした。業者の防衛庁への過大請求疑惑についても「記憶にない」とかわした。
業者側は守屋氏をなぜ特別に厚遇してきたのか。何らかの見返りを期待する意図があった。そう疑うのが自然だ。守屋氏の説明はこの疑念に答えていない。
宴席に防衛庁長官経験者が同席していたことも見過ごせない。だが名前の公表は拒んだ。これも腑に落ちない。
守屋氏は、米軍普天間飛行場の移設問題に実質上の責任者として深くかかわってきた。喚問では県内の特定の業者に対し、V字形滑走路案の機密図面の提供に関する疑いも指摘された。否定はしたが、もっと詳細に語る必要がある。
喚問では結局、疑惑は晴れなかった。元専務を含め関係者の国会招致などを通じ疑惑の解明を進めるべきだ。あいまいなままに終わらせては、防衛行政への信頼回復は遠のくばかりだ。
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