司法は、行政の前にひざまずいている。そんな姿が、沖縄返還密約訴訟控訴審判決で浮き彫りになった。日本はもはや法治国家たり得ないのか。名ばかりの「三権分立」の前に、国民の権利と人権が危機にさらされている。
20日、東京高裁が出した密約訴訟控訴審判決は、事実に目を伏せ、救済を求める訴えに耳を閉ざし、逆に国家犯罪を擁護する。そんな中身となった。
密約訴訟の源流は、1972年4月の外務省機密漏えい事件にさかのぼる。
沖縄返還の際、政府は沖縄返還以前に米政府が約束していた復元補償費400万ドルを日本側が肩代わりする密約を結んでいた。
沖縄の「無償返還」を大看板に掲げていた当時の佐藤栄作首相だが、裏では金銭授受の「有償返還」であった。膨大な金は国会審議を経ずに交わされた密約で支払われた。議会制民主主義を否定する「国家犯罪」として、当時、毎日新聞記者だったジャーナリストの西山太吉さんは、スクープ報道した。
国民の「知る権利」に応える報道に対し、政府は「密約は存在しない」と否定しながら、西山氏や情報を提供した外務省職員を機密漏えいの罪で訴え、有罪とした。
それから28年後、密約は米公文書で「存在」が明らかになった。日米交渉の当事者であった外務省元高官も存在を証言した。
密約は周知の事実となったが、控訴審判決は、事実に目を伏せ、密約の認定も、判断も避けた。
密約の存在が明確になった後も、存在を否定し続ける政府に、西山さんは「名誉を傷つけられている」と訴えるが、「公式見解を述べたにすぎず、原告の名誉を棄損するとはいえない」と、判決は政府の主張を支持している。
そして密約訴訟自体にも、事件から20年を経たとして時効に当たる民法の「除斥期間」を適用し、「賠償請求権は認められない」との政府側の主張を支持し、訴えを棄却している。
密約の存在を裏付ける米公文書が報道されたのは2002年6月。西山さんは「私は当時、田舎にいる一個人で、完全に社会的に抹殺されていた。すぐに訴えればよかったといわれても、どう活動できたのか」と、反論している。
国家犯罪とされる沖縄返還密約の存在について、国民は明確な判断を期待した。しかし、1審に次いで控訴審も判断を回避し、肩すかしの判決となった。
事実や真実に背を向ける残念な結果である。西山さんは「ここでやめるわけにいかない」という。
30年の時を超え、国民の知る権利と名誉回復、国家賠償を求める訴訟は、最高裁で争われる。引き続き司法判断を注視したい。
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