組織が正常に機能しているか、どうか。どうすれば分かるのだろうか。不測の事態が起こった場合の対応を見れば、大体は想像がつく。普段から組織の規律が緩んでいたとしたら、不祥事の際、次々とぼろが出てくる。イージス艦による漁船衝突事故を起こした後の海自を含めた防衛省のあたふたぶりを見ていると、その感をますます強くする。
前防衛事務次官の汚職事件に始まってイージス艦機密情報漏洩(ろうえい)事件、元海幕防衛課長の給油量隠ぺい問題、航海日誌の誤廃棄。いずれも、最近、相次いで発生した不祥事だがパターンは同じだ。発表、訂正、釈明、謝罪…。その場しのぎに終始し、結局、問題の本質は明らかにされない。ひと言でいえば、組織の隠ぺい体質がより印象に残っただけだ。
事故が起きた19日、石破茂防衛相は夕方の自民党部会で、あたごの見張り員が漁船を見たのは2分前だった、と公表した。ところが、同日午後の海上幕僚長の会見で、そのことは明かされていない。防衛部長が防衛相の発言内容に慌てて追認したのは、午後11時になってから。見張り員が清徳丸を視認したのが、実は12分前だったことも、自民党部会で初めて公表されている。夜になって防衛部長が釈明する光景が繰り返されたが、これなども「情報隠し」と疑われても仕方がない。一事が万事だ。
事故前後の模様が、僚船などの証言から次第に明らかになってきている。普段から漁船のほうが自衛艦を避けてきたというのだ。衝突防止法で自衛艦側に回避義務がある場合でも。あたごの見張り員も「向こうがよけると思った」とも述べており、事故はいつ起きても不思議ではない状態だったということになる。さらに、あれだけ船舶が過密な場所で自動操舵(そうだ)のまま突っ走る、というのが普通だったというから驚きだ。広い公海ならいざ知らず。たがが緩んでいるというか、おごりさえ感じる。
一方、組織として文民統制(シビリアンコントロール)が、正常に働いているのかどうか。残念ながら、これもまた、疑わしい。事故の一報が防衛相や首相に伝えられたのが1時間半から2時間後というのだから、あきれるばかりだ。自衛活動ではなく、単なる事故という判断だとしたら、大きな間違いだ。勝手な思い込みが、取り返しのつかない事態を招くことだってあり得るだろう。
背景に背広組(内局)と制服組(自衛隊)との確執があるなら事態はより深刻。文民統制の危機が杞憂(きゆう)であることを祈るしかない。
防衛省の組織再編案を策定する「改革推進チーム」が、議論を始めた。多くの課題があるが、国民の納得できる結論が必要だ。
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