第1 本準備書面について
御庁より平成27年11月18日付で送付された「原告への釈明事項」につき、以下のとおり回答する。
第2 釈明事項に対する回答
1 釈明事項1について
被告がした平成27年10月13日付本件取り消し処分は、本件承認処分(平成25年12月27日付)を取り消すというものであり、平成26年12月5日付の変更承認処分は、本件取り消し処分の対象となっていない。原告としては、変更承認処分は本件取り消し処分の対象外であると理解している。
2 釈明事項2について
(1)御庁提示の見解について
御庁から、行政処分に瑕疵(かし)があれば原則として自庁取り消し権が発生し、例外的に自庁取り消し権が制限されるとの見解が示されているが、訴状で述べたとおり、行政処分に瑕疵があっても、原則として自庁取り消し権は発生せず、極めて例外的な場合に限り、自庁取り消し権が発生するものと解される。
(2)御庁提示の見解を前提とした主張の整理
同見解においても取り消し権の行使はできないと解すべきことになる。
ア 行政行為の相手方等の信頼保護の必要性
イ 瑕疵ある行政行為を放置することによる行政上の不利益(瑕疵の重大性)
ウ 比較衡量
アがイに勝ることは明らかであるから、本件承認処分の取り消し権の行使をすることができないことになる。
3 釈明事項3について
(1)法4条1項1号の要件の審査において、都道府県知事は、国防上の必要性や外交上の必要性に関して審査判断する権限はないことについて
沖縄県知事は、法4条1項1号適合性の判断に当たって、埋め立ての対象とされる区域について、その利用目的の公共性の有無等を「国土利用上適正且合理的」かどうかを判断する一要素として審査判断できるにすぎないと解すべきである。
(2)釈明事項2の(2)の判断における「公益侵害」や、代執行訴訟の要件としての「著しく公益を害する」ことの評価に際し、国防・外交上の事由が裁判所の審査対象となるかという点について
裁判所の審査対象になると解する。これらの判断は、法4条1項1号にいう「国土利用上適正且合理的」かどうかについての都道府県知事の審査権限の範囲の問題ではなく、当該行為により生じる不利益一般について多角的に考慮されるべき事情の一つであって、いかなる公益が害されるかについて、裁判所の審査対象が限定される理由はない。
4 釈明事項4について
(1)法4条1項1号について
同要件は、それを判断する承認(免許)権者にいわゆる要件裁量を相当程度広範に認める趣旨であると解され、裁判所による裁量統制密度は低くなる場合に当たるといえよう。
(2)法4条1項2号について(特に、環境保全について)
同要件は、それを判断する承認(免許)権者にいわゆる要件裁量を相当程度広範に認める趣旨であると解される。他方で、上述した1号要件と異なり、事業者が実施する具体的な環境影響評価および環境保全措置等に係る審査を求めるものであるから、前者と比較して司法統制の密度が幾分高いものであると考えられる。
5 釈明事項5について
(1)取り消し処分の理由第1.1(3)および同2(3)について
(2)取り消し処分の理由第1.2(1)(1)について
6 釈明事項6について
都道府県知事に国防・外交に関する政策判断を審査する権限がないことは、法47条1項、公有水面埋立法施行令32条2号および3号のほか、地方自治法1条の2や、法51条1項、42条1項、国土交通省設置法4条57号からも解釈できる。
7 釈明事項7について
法4条1項1号の要件を具体化する関係法令は存在しないが、運用上、「埋め立てそのものおよび埋め立て地の用途が国土利用上適正かつ合理的であるかどうかにつき慎重に審査すること」とされている。
8 釈明事項8について
(1)法3条は、埋め立て承認(免許)を申請する願書の提出があった際の、都道府県知事による告示縦覧およびこれに対する意見聴取の手続きを定めている。聴取された意見の取り扱いについては特に規定はなく、承認(免許)権者を拘束するものではない。承認(免許)権者が申請を審査するに当たり、同意見を考慮するか否かも承認(免許)権者の裁量に任されている。
(2)また、同3項は、埋め立てに関し利害関係を有する者は都道府県知事に意見書を提出することができる旨を規定するものである。提出された意見書の取り扱いについては特に規定はなく、承認(免許)権者を拘束するものではない。承認(免許)権者が申請を審査するに当たり、同意見を考慮するか否かも承認(免許)権者の裁量に任されている。
(3)前知事は、本件承認処分に当たり、願書および関係図書を縦覧に供し、利害関係者から、縦覧期間内(平成25年6月28日から同年7月18日まで)において、3511件の意見書の提出を受け、上記期間外においても、同年8月30日までに61件の意見書の提出を受けた。また、名護市長に対して意見照会を行い、同年11月27日に回答を受理した。
(4)なお、本件承認処分に当たり、前知事がどのような者のどのような意見をどの程度考慮したかについては、原告は承知していない。