昔の沖縄、厚紙で再現 浦添市の又吉正雄さん(95)


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厚紙で沖縄の古民家や軽便鉄道を手作りする又吉正雄さん=浦添市勢理客

 【浦添】厚紙で昔の赤瓦屋根の沖縄の民家や軽便鉄道を工作し、地域から評判となっているのは、浦添市勢理客に住む又吉正雄さん(95)だ。「これまで80個くらい作ったかな?」と話し、近くの病院や小学校にも寄贈。地域住民ら、欲しい人には「持っていきなさい」とプレゼントしては喜ばれている。

 又吉さんが工作を始めたのは14、15年ほど前で、八重山の人がかやぶき屋根の家を造ったのを見たのがきっかけだった。幼少時に育った自分の家を再現し、また近所にあった屋敷、首里で幼いころに乗った軽便鉄道の車両を記憶をたどりながら制作している。
 お菓子の空箱やティッシュ箱の厚紙などを再利用し、屋根は接着剤で固定、油性の色ペンを使って瓦屋根やかやぶき屋根を描き仕上げる。家の周りの植栽やひんぷん、石垣も必ず作品に登場する。中には屋根の上にシーサーが乗っている作品もある。
 屋敷だったら3日ぐらいで完成させるという。「仕事ができる年齢ではないし、こんなものを作って楽しんで暮らしている」とほほ笑んだ。
 話し方もしっかりしており、健康体そのものの又吉さんに、長寿の秘訣(ひけつ)を尋ねると「かつて3回も戦争に行ったけど、誰も殺さなかったからかな」。
 1度目はフィリピンに、2度目はインドネシアのジャワ島、最後は満州からシベリア行きとなり、シベリアでは捕虜として2年半、マイナス40度の極寒を生き抜いた。
 「帰ってきたら、同級生は全員、戦争で亡くなっていた」とぽつりと話した。
 もともとは市仲西出身で、父親は郵便局長だった。かつて住んでいた家や周囲の風景を懐かしむように、工作に今日も取り組んでいる。