「世界を笑顔に」 ちょんまげ侍の渡辺さん全国行脚


この記事を書いた人 志良堂 仁
「世界を笑顔にしたい」と侍姿で日本全国を歩く渡辺好博さん=2015年12月31日、名護市内

 【名護】2014年6月に北海道を出発し、全ての都道府県を徒歩で旅している渡辺好博さん(35)=長崎県出身、ニューヨーク在住=が15年12月29日、名護市内に到達し、年を越した。道行く人はほぼ例外なく渡辺さんを凝視する。笑顔で手を振る人もいる。なぜなら渡辺さんはちょんまげに着物姿の“現在に生きる侍”だからだ。

 きれいにそり上げたちょんまげ頭とはもう3年の付き合いだ。徒歩の旅のため足元だけはスニーカー。渡辺さんは「現在のわらじ」と呼ぶ。荷物を載せたベビーカーには高く大きなのぼりがはためく。「天下笑一 あなたの笑顔は美しい」
 渡辺さんは旅の理由を「世界を笑顔にしたい。このメッセージを伝えるためなら手段は何でもいい。みんなが一緒に笑えるまで僕は笑えない」と話す。道中はたくさんの人が笑顔で話し掛けてくれた。富士山の樹海で自殺を考えていた男性は話し込むうちに思いとどまり笑顔で帰っていった。男性とは今も連絡を取る。
 14年6月から約4カ月間で北海道から大阪城まで27都道府県を歩いた後、ビザの関係で約半年間ニューヨークへ戻り、15年5月に再スタートした。ゴールの故郷・長崎県を含め、残るは熊本、佐賀の3県だ。
 ちょんまげにしたきっかけは、13年8月に米大リーグの試合前にニューヨーク在住の日本人男声合唱団が米国歌斉唱をしたこと。参加した渡辺さんは日本の文化を紹介しようとタキシード姿にちょんまげで歌った。人目を気にせず好きなことをしてもいいんだ、というメッセージを込めた。
 この旅は追悼の旅でもある。米国の大学で演劇を学んでいた時に世話になった女性が13年1月に他界した。米国各地で暮らしていた彼女の人生をたどろうと、同3月から約半年間かけて米国内6千キロを徒歩で横断した。日本が好きだったという彼女の遺骨のかけらと一緒に、今は日本を案内する気持ちで47都道府県を歩いている。
 12日現在、鹿児島県の喜界島にいる。渡辺さんの旅は本人のフェイスブックで確認できる。(長浜良起)