本物はどっち? 見守りポリスで事故減らす


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自身をモデルに制作したアメリカンポリスと安全運転を呼び掛けるOBJETの徳平広宣社長(右)=沖縄市与儀の同社

 【沖縄】沖縄市与儀にある交差点に、年季の入った大型バイクにまたがり、笑いながら交差点を見守る「アメリカンポリス」がいる。本物の人間かと思いきや、実は作り物。両脇に「交通安全」の旗を携え、運転手に安全運転を呼び掛ける。制作したのは、特殊造形を手掛けるOBJET(オブジェ、沖縄市、徳平広宣社長)だ。頻発していた会社前交差点での交通事故を減らそうと、3年前から敷地内に設置する。徳平社長(33)は「社員も楽しみながら創作している」といい、地域貢献と創作意欲の向上を両立させる。

 国道329号から脇道に入ってすぐの会社前の交差点は、奥に県の教育施設などがあるため交通量が多い。「優先道路が分からず、前は多いと週に3~4回、1日に2回事故が起きたこともあった」(徳平社長)という。
 そこで思い付いたのが、会社事業を生かした安全運転の呼び掛けだ。先代社長で、徳平社長の父・國広さん(59)は「ポリスを見て『なんだこれ』と感じ、少し速度を緩めてくれたらいい。実際に事故は減り、今は月に1回あるかないかだ」と誇らしげに語る。
 アメリカンポリスにした理由は「コミカルで目立つから」(徳平社長)。2代目の現ポリスは今年1月に設置。初代は友人が経営する市内の居酒屋「Bian(ビアン)」に昨年寄贈し、今も飲酒運転根絶呼び掛けに活躍中。
 モデルは徳平社長自身。同じ格好をして横に並ぶと、体格や表情までうり二つ。赤黒くさび付いたバイク、後部の入れ物からのぞくコーラとピザ。細部にまでこだわる。2代目は仕事の合間を縫い、社員と相談し約2カ月で製作した。
 会社は徳平社長の祖父・三郎(92)さんが看板製作の会社として1965年に設立した。立体造形は國広さんの提案で約30年前に開始。県内では沖縄こどもの国のアーケードや沖縄市のゆるキャラ「エイ坊」、ホテルの建造物などを手掛け、県外の飲食店などからも受注がある。
 仕事は多忙だが、遊び心は忘れない。徳平社長は「事故が減って何よりだ。ポリスのおかげで名刺交換した時に会社を既に知られていることも増えた」と話し、ポリスと同じ笑顔を見せた。