ウクライナ新政権 停戦と融和の好機逸すな


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 内乱が続くウクライナの新大統領に親欧米のペトロ・ポロシェンコ氏が就任した。

 東部での親ロシア派武装勢力と政権部隊側の戦闘がやまない中、強硬一辺倒だったロシアの姿勢に変化の兆しが出ている。ウクライナとロシアは建設的対話を積み重ね、早期停戦と国民融和を一刻も早く実現してもらいたい。
 ベルギーで開かれていたG7首脳会議(サミット)の首脳宣言はクリミアを併合したロシアを非難するとともに、5月の大統領選で当選したポロシェンコ氏を次期大統領として歓迎し、ウクライナ支援をうたっていた。
 ロシアとの距離感にばらつきのあるG7の結束を重視したことで、米国が求めたロシアへの追加制裁発動は「必要な情勢になれば」と後退した。重要な点は、ロシアに対して新政権への協力と国境付近に残る軍の撤退を求め、ウクライナ政府軍と衝突する親ロシア派の武装解除への影響力行使を促したことだ。対立の先鋭化を避けたい欧州側と北方領土問題を抱える日本の思惑も反映した。
 ロシアを制裁によって追い込むのではなく、武装した親ロシア派勢力に対し、影響力の発揮を期待
する対話重視の姿勢は評価できる。
 サミットから日を置かず、ノルマンディ上陸作戦70周年記念式典のために約20カ国の首脳が集ったパリで、ロシアのプーチン大統領は米英仏の首脳と会談した。
 さらに、就任前日のポロシェンコ氏とも非公式に会談し、東部の混乱収束に向けた実務交渉に入ることで合意した、という。その後、プーチン大統領は国境警備当局に対し、ウクライナへの不法越境取り締まりを指示している。
 ロシアの出方はまだ不透明な部分を残すが、ウクライナとの対話を含め、事態打開へ重い腰を上げ始めた好機を逸してはならない。
 ウクライナの内戦化の芽を断つため、G7を軸に、国際社会は話し合いによる平和的解決を導く環境づくりに努めねばならない。
 大統領選で示された民意の大勢は、「欧州かロシアか」の二者択一に距離を置き、その均衡を図ることにある。プーチン大統領も、その民意を無視できまい。
 ポロシェンコ体制の下、ウクライナの再興と民族問題の解決に向けた、外交対話と民主的な国内議論を深めてほしい。