地域活動に熱心な還暦間近のある料理人の話に興味をそそられた。「40代からは5歳年下、50代からは10歳年下の世代との交流を増やしている」。年下世代から新鮮な情報を吸収する以上に「人づくり」への思いを感じた
▼昨年末、名護市羽地で初めて開かれた子ども豊年祭は世代間交流そのものだった。主役は小中高生。演出や進行は青年会が務め、年配の人は助言を極力控えて裏方で支えた。幅広い世代の連携で伝統継承への思いが描かれた一日となった
▼1月にも世代間交流の温かさに触れる会合に顔を出す機会があった。那覇市近郊に住む大宜味村大兼久出身者の合同生年祝いだ。祝いが始まってもうすぐ50年になるという
▼祝いの対象は13歳からカジマヤーの97歳までの55人。司会者は一人一人を屋号で紹介した。大兼久で暮らしたことのない若者も増えたが、約400人の「同郷者」の余興で祝福を受け、古里を身近に感じた様子が見て取れた
▼大兼久はかつて沖縄特有の伝統追い込み漁「アギヤー」が盛んだった。漁を通して異なる世代同士で団結力を養い、人を育てる大切さを自然と心に刻んだ
▼時は流れ、親族でさえ交流する機会は以前ほど多くはない。だが、年配者へのいたわりの心や後輩の成長を見守る気持ちなど、世代間の触れ合いにはさまざまな芽吹きがある。大兼久の合同生年祝いがいい例だ。