コラム「南風」 京都を訪れて


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 久しぶりに京都を訪れました。学生時代を過ごしたという郷愁もありますが、春夏秋冬それぞれに魅力を感じさせる街だと思います。とりわけこの時期は、凛(りん)とした寒さに情緒ある街並みが映え、何とも言えない風情を醸し出しています。

 旧友と再会し語り合う中で、ふと京都の魅力について話題が上りました。川端康成の「古都」に描かれているように、京都は古くからの慣習が今なお生活に息づいています。また、随所にある文化遺産や落ち着いた街のたたずまいにも、歴史を感じ心が癒やされます。
 他方で明治以降、京都は先駆的な試みを重ねてきました。積極的に産業振興を図ったこともその一つです。その結果、今では世界的に競争力ある企業が数多く立地しており、西陣織などの伝統産業も海外展開や若手職人の育成により活気が出ています。こうした進取の気風が伝統と相まってこの街の魅力を高めているように思います。
 加えて、学生の街であることも忘れてはならないでしょう。毎年、多くの若者が京都に来て学生時代を過ごし、他の地域に旅立っていきます。このような人の移動による知の交流もまた、この街の活力の源となっていると感じます。
 いま、多くの観光客が沖縄を訪れています。今後は、競争力ある産業の育成に加え、文化学術面での交流をさらに図り、沖縄がアジアの知の拠点になればと思います。そのためには、国内外から志ある若者をいかに引きつけるかが鍵となるのではないでしょうか。
 昨年、県内の大学、行政、企業、経済団体からなる「沖縄産学官協働人財育成円卓会議」が発足したと聞きます。今後の取り組みに注目したいと思います。
 今回、京都を訪れて変わらぬ街の雰囲気にほっとするとともに、この街が魅力を保ち続けている理由を再確認できた気がしました。
(國代尚章、沖縄労働局職業安定部長)