【島人の目】国家挙げて旧正月祝い


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 ことしの旧正月「春節」は2月19日。その前の週末の14、15の両日、ブエノスアイレス市の中華街では、ひつじ年の新年(中華暦4713年)の祝賀行事が開かれた。地元住民や観光客30万人超が集い、前例のない盛大な旧正月祝いとなった。十数年前から催してきた行事で2010年までは3、4万人程度であったのが、一昨年から規模が拡大し、現在では国家を挙げての人気イベントに成長した。

 ブエノスアイレス市などの主催で、アルゼンチン移民団体連合会が後援した。中国の赤い旗や簡体字が目立っていたにもかかわらず、台湾人社会の代表者も主催者メンバーとなった。23を超える国や地域から参加し、スペイン語圏域全体で最大となる春節として成功裏に終わった。
 移民国家アルゼンチンでも、特に首都ブエノスアイレスは多彩な人種のるつぼで、多くの「華人」(ホアレン=中国血統の人)が居住している。全アルゼンチンの中華系総人口は12万人を超え、そのうち約20%は台湾系である。
 ことしの新年祝いは恒例の龍舞とともに、きらびやかな皇帝衣装を着た子どもたちが登場し、獅子舞・舞踊・中国の雑技や武術などの伝統芸能を披露した。中華系以外にも、ブエノスアイレス市のさまざまな移民団体の舞踊団が演舞を披露し、沖縄の芸能グループも参加した。
 ブエノスアイレスというメトロポリタン都市の国際性を豊富に感じさせたのは、特に中華系から中国オペラ歌手のモニカ・チャオや、中国の伝統筝曲のアンサンブル演奏もあったことだ。踊りやすい現代ポップも組み込まれ、その中には日本の「時の流れに身をまかせ」の中国語バージョン「我只在乎〓(ウォツーツァイホゥーニー)」などもあった。
 中華系以外のグループからも、アラビア系、アルメニア系、イタリア系、スペイン系、ボリビア系、ペルー系、韓国系、日系などの音楽や舞踊のパフォーマンスがあり、ブエノスアイレス市の文化的多様性の象徴となった。日本人女性タンゴダンサーが観衆を魅了し、アルゼンチン夢海渡太鼓も登場し「夢海渡」「台風」と「舞い花」の演目を力強いパフォーマンスで見せつけた。
 イベントの司会を務めたのは台湾出身のカルロス・リンさん(35)。アルゼンチンの国立放送大学(ISER)を卒業し、アナウンサーの資格を得て数年前から活躍している。リンさんはその美しいスペイン語で、春節フェスティバルの幕あいに中国の古代伝説や長い歴史について語った。最終日の午後9時には盛大な花火が打ち上げられ、祭りを締めくくった。
 1960~70年代、アルゼンチンの街角で東洋人を見掛ければ、たいていは日系人であった。いまや時代も移り変わり、中国人が台頭している。これは世界中の傾向でアルゼンチンも例外ではなくなったと言えよう。
(大城リカルド、アルゼンチン通信員)

※注:〓はニンベンに「尓」