<社説>政府・沖縄県協議会 リンクさせてはならない


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 沖縄の米軍基地負担軽減策や振興策を話し合う「政府・沖縄県協議会」(仮称)の設置を菅義偉官房長官が県に提案した。

 名護市辺野古への新基地建設について話し合う「集中協議」は決裂した。それで終わりとせず、一致点を見いだすために継続して話し合う必要は当然ある。だが、基地問題と振興策を同じ協議機関で話し合うことには強い違和感を禁じ得ない。
 沖縄は基地と引き換えに政府から金をもらっているとの国民の誤解はいまだ根強い。誤解を増幅させることは避けねばならない。
 「沖縄振興予算」は内閣府沖縄担当部局が各省庁に関わる予算を一括計上し、財務省に要求している。各省庁と直接予算折衝する他府県とは仕組みが異なる。「沖縄振興」の文言故に沖縄だけ別枠の予算をもらっているとの誤解が生じているのである。
 それを払拭(ふっしょく)するため、翁長雄志知事は第2回集中協議の際、報道陣に資料を配付し、地方交付税は全国で16位、国庫支出金を合わせて6位であることも説明した。
 しかし、沖縄振興予算について詳しく報じるマスコミは少ない。それどころか、結果として政府の思惑通りとなった報道が目立つ。
 最後の集中協議に出席した安倍晋三首相の新基地建設と関係のない発言を、多くのマスコミが「沖縄振興予算3千億円台継続方針も約束」と報じたことも一例である。政府が沖縄をあたかも厚遇しているとの印象を読者や視聴者に与えることを危惧する。
 政府は新たな協議会を通して、振興策と絡めて沖縄が基地を受け入れることが、さも当然という印象を引き続き国民に植え付けようとするのではないか。翁長知事は集中協議で一歩も引かなかった。翁長知事が政府の思惑にのみ込まれることはなかろう。だが、問題は国民が受ける印象である。
 新たな協議会を実りあるものにする考えが政府にあるなら、県と協力して誤解解消に力を入れるべきだ。それが新たな話し合いの前提となる。
 新たな協議会を基地と振興策がリンクすると国民に思わせる場にしてはならない。さらに言えば、協議は「合意」を目指して行うものである。70年も基地の危険性を放置し、今後も沖縄に押し付ける政府に道理はない。政府の思惑が、沖縄と丁寧に話し合ったと見せかけるだけなら県が乗る必要はない。