<金口木舌>再出港

 那覇のクルーズ船バースに寄港する船の中でダイヤモンド・プリンセス号には命名秘話がある。同時建造中だった姉妹船が火災に遭ったのだ。その納期が迫っていたため、焼けた方の船名に名前を変えて就航した

▼建造は長崎にある造船所。古くからの造船の街が当時、海外から受注し、誇りを持って取り組む豪華客船の建造だった。主要産業の経営、信頼に大打撃である。燃え上がり、焼け落ちた船を見た長崎の人々の落ち込みは相当なものだったという
▼ボクシングの比嘉大吾選手が復帰戦に挑む。王座陥落の当時を思い出すと、この船のエピソードが浮かんできた。きら星のような郷土の才能のまさかの挫折。県民の無念、失望の思いが重なったのかもしれない
▼試合に向けて練習を公開し、当時を振り返った。減量は失敗するだろうと分かっていたという。悔しさの一方、しばらくすると飲食できる幸せを実感していたと率直に語った
▼引退も考えた。働く意向を父に伝えると「使う額を考えたら破産すると言われた」そうだ。モチベーションが全くないところから立ち上がったのはファンら支えてくれた人たちへの思いだった
▼再出航となる。実戦から遠ざかり、漆黒の海に出て行くような恐ろしさを感じることがあるかもしれない。その船路は県民が見守っている。こぎ出すその姿が多くの人に力を与える。



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