<金口木舌>ウォンバットと気候変動


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「ウォンバットの巣穴にコアラが逃げ込み、火災から逃れている」。豪州の大規模森林火災に関連してインターネット上で話題になっている。米誌ニューズウィークの検証記事は、巣穴をコアラやウサギが出入りする動画とともに専門家の見解を伝えている

▼ウォンバットは体長1メートルを超えることもある大型の有袋類で、豪州の固有種だ。地中に掘った穴で暮らす。記事で、専門家は「ウォンバットが羊飼いのように動物を誘導した」といった、SNSで拡散された言説を否定したが、巣穴は動物の避難所として機能しているとする
▼火災は昨年9月から続き、今月9日までに25人が死亡。数万匹のコアラが焼死したとされる。火災が拡大した原因に、高温と乾燥が挙げられている
▼世界気象機関(WMO)によると2019年の世界の平均気温は観測史上2番目に高かった。19年までの10年間の平均気温は過去最高だ。地球温暖化の影響がさまざまな数値に表れている
▼世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加した環境活動家のグレタ・トゥンベリさんは「科学を重視し、危機をあるがままに認識し始めなければならない」と訴える
▼同じ会議で演説したトランプ米大統領は米中貿易協議での合意を挙げ、経済政策を自賛した。世界経済の課題が議論される国際会議にふさわしいのはどちらの発言だろうか。