<金口木舌>軽蔑は軽蔑を呼ぶ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 短歌は三十一文字(みそひともじ)とも呼ばれる。わずか31字で花鳥風月や心の機微を詠み、凝縮された世界観が人の心を動かす。これに対し、140字のツイッターで世界中を振り回しているのが、次期米大統領のトランプ氏だ

▼言いたい放題に発信している。メキシコに工場を造ろうとした自動車メーカーを“口撃”した結果、米フォードは計画撤回、トヨタは100億ドルの投資を発表した。権力者による脅迫も同然だ
▼トランプ氏の危うい言動を、女優のメリル・ストリープさんがゴールデン・グローブ賞の授賞式で真っ向から批判した。2015年の選挙集会で、トランプ氏が身体障がいのある米紙記者のまねをしたことに「胸を打ち砕かれた」と非難した
▼「軽蔑は軽蔑を呼び、暴力は暴力を生む。権力者が立場を利用して他人をいじめれば、私たちは全員敗者となる」。声を震わせながらの訴えに共感が広がっている
▼対岸の出来事ではない。沖縄に対しても公人によるヘイト(憎悪)発言が横行している。人気作家しかり、機動隊員しかり、隊員を擁護した大阪府知事しかり
▼ストリープさんは「権力者が他者を侮蔑するならば、人々も同じことをしてもいいと許すことになる」とも語った。「寄り添う」の4文字を繰り返すだけで、沖縄の民意を無視し続ける安倍政権はどうか。ヘイトの温床をつくってはいないだろうか。