<金口木舌>6年前、米首都ワシントンの食堂で男性が声を掛けてきた。「仕事・・・


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 6年前、米首都ワシントンの食堂で男性が声を掛けてきた。「仕事を探しているが無職で、ずっと食事をしていない」。一瞬たじろいだが、事件に巻き込まれるような場所ではない

▼10ドル札と軽食を差し出すと、男性は「神のご加護を」と礼を述べた。声の響きが心地よかった。ワシントンでは街を歩いていると、寄付を求める人や支援団体に会う機会が多かった
▼手持ちの現金は減るが、与えることで心の充足が得られた。帰国してからは、寄付をする機会がなくなった。街を歩いていても支援を求める人はほとんどおらず、「人助け」は遠のいた
▼浦添市の鏡が丘特別支援学校の生徒らが先日、7キロ分のペットボトルのふたをマックスバリュ坂田店に贈呈した。ふたはリサイクル資源として売られ、収益がワクチンの購入費になる
▼「世界の子どもにワクチンを日本委員会」によると、世界で1日4千人、時間にして20秒に1人の赤ちゃんや子どもが感染症で亡くなっている。車いすで贈呈式に参加した生徒会長の髙宮城愛乃さんは「人の役に立つためにほんの少しでも自分ができることをやっていきたい」と語った
▼中央官庁が雇用している障がい者数を42年間にわたって水増ししていた。法律を守らず、ごまかしてきた官僚たちの目に、障がいがありながら人のためにできることを探す生徒たちの姿はどう映るだろうか。