<社説>嘉手納基地汚染 地位協定の改定しかない


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 在沖米軍基地による環境汚染の深刻さ、闇の深さがあらためて照らし出された。基地を過重に抱える県民の不安を強める異常事態である。在沖米軍基地内の化学物質管理は無秩序状態にある。

 米国内での定めに準じて、基地内の有害物質の管理と汚染時の対応を厳格化して制度化し、順守を強く促すべきだ。それには、米軍に特権的地位を与えたままの日米地位協定の改定が不可欠である。
 米空軍嘉手納基地が所有する約500個の変圧器をめぐり、有害物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)汚染事案に関する調査が約半数しか実施されていなかった。半数の漏出事故は調査さえされずに野放しになっている。
 さらに、1998年から2015年にかけて、同基地内で計4万リットルのジェット燃料などの流出事故が発生していた。10年から14年に起きた206件のうち、日本側に報告されたのは23件だけだった。
 いずれもジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が米国の情報公開法を駆使して電子メール記録などを入手し、明らかにした。
 環境保全とは名ばかりの無法地帯と言っていい。米本国の基地なら、重大事案として国や州の環境保護庁が調査に乗り出し、問題化することは間違いない。
 日米両政府は在日米軍基地の環境管理基準(JEGS)を挙げ、日米の厳しい方の基準を適用するので環境汚染防止が図られると主張してきた。今回の事態はJEGSが全く機能せず、基地内の統治能力が緩み切っていることを示す。
 米軍基地内での環境汚染には幾重もの問題点が温存されている。
 まず日本の国内法が適用されず、汚染発生時の自治体による立ち入り権が認められていない。米軍には返還後の原状回復義務を免除している。汚染抑止力が働かない悪循環が歴然としている。
 15年9月に日米両政府は基地内の現地調査に関する環境補足協定を締結したが、米軍側の裁量権が優先され、自治体側の立ち入り調査要求時の米軍の受け入れ義務はない。
 米本国では常識になっている有害物質の使用履歴もなく、基地内での管理実態も公表されない。
 基地周辺住民と自治体を軽んじる日米の二重基準は許されない。こうした不条理を絶つには、日米地位協定の改定に踏み込み、米軍に汚染防止義務を課すしかない。
英文へ→Editorial: Pollution from Kadena reminds us that there is no choice but to revise the SOFA