<社説>こどもの日 子とつながり未来支えよう


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 きょうは「こどもの日」である。ことしは、深刻さを増す県内の「子どもの貧困」に対する関心がかつてないほど高まる中で迎えた。

 沖縄の未来を開く子どもたちが夢と希望に彩られながら、幸せに生きることができるよう、全ての大人が向き合って改善策を実践し、沖縄社会の責任を果たしたい。
 「こどもの日」が祝日になってから3年後の1951年に制定された児童憲章は、全ての子どもが人として尊ばれ、良い環境の中で育てられるよう促している。その理念で、全児童が健やかに生まれて生活を保障され、就学の道が確保されねばならないなどと定める。
 だが、生きていくことに精いっぱいで、わが子と向き合う余裕がない家庭が増えている。それと呼応するように児童虐待件数も増加傾向にある。全国の児童相談所が2014年度に対応した児童虐待の通告は約8万8千件、県内は478件でいずれも過去最多だった。
 県が1月に発表した子どもの貧困率は29・9%で、全国平均の16・3%(12年)に比べて深刻さが際立つ。困窮世帯の子や孫に貧困が継続される傾向が著しく、学びや自立の機会を奪っている。
 こうした状況を受け、県も「子どもの貧困対策計画」を策定し、本腰を入れている。鍵を握る理念は「つながり、皆で育む」だ。
 家庭や地域で子どもたちを包み込み、健やかな成長を支える実践例が本紙の連載「希望この手に」で報告されている。孤食や不登校に陥りがちな子らをPTAや地域が支える浦添市の「てぃーだこども食堂」や那覇市内の公民館の取り組みは示唆に富む。
 困窮世帯の生徒の高校進学を後押しする石垣中学校や那覇市の児童自立支援員の活動は、生徒に寄り添い、貧困が教育格差に結び付くことに歯止めをかけている。
 「子どもができたら、愛情を注げ。だが、愛も庇護(ひご)もなく学校にも行けない子どもが世界に数多くいることを忘れずに。人は群れなす社会的人間として他者を必要とし、孤独では生きられない」。清貧な生活を貫き、「世界で最も心が豊かな大統領」として脚光を浴びる前ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏は、日本の若者への講演でこう語った。
 人の痛みをわが事と受け止める沖縄の「肝苦(ちむぐり)さん」の精神に通じる。子どもたちの成長を支える意識をより一層高めねばならない。